日本で最も「高負荷な書類仕事」をしている?! 中央省庁のドキュメントDXに貢献するSaaSプロダクト「LAWGUE」とは

青木 まりな
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絶対にミスが許されない、作業的にも心理的にも負荷の高い文書業務を日常的に行っている、中央省庁や自治体などのパブリックセクター。特に法令等にまつわる文書は、紙に印刷したものを多くの人が目視で読み上げて何度も確認するなど、多くの人手が割かれています。

さらに、セキュリティなどの観点から、数十年前に導入したシステムを継続的に利用せざるを得ないなど、現況に合わない業務フローが残っていることも。ただでさえ大変な業務がさらに煩雑になるような事態も発生しています。

そういった文書業務にまつわる様々な非効率を解消できるプロダクト、それが「LAWGUE」です。

本記事では、LAWGUEがどのように中央省庁・自治体の文書業務を効率化するのか、経済産業省(以下、経産省)との実証実験を例にとってご紹介します。本プロジェクトを推進してきたFRAIM株式会社 代表取締役社長 堀口圭とプロジェクト推進部 部長 石井智宏に話を聞きました。

人手頼みでとにかく時間がかかる…中央省庁・自治体における文書業務の課題感

中央省庁や自治体の文書業務において、どのような課題があったのでしょうか?

石井:中央省庁や自治体といったパブリックセクターでは、法令や条例の作成・審査、法令改訂に伴う規程の改定、要領やマニュアルの作成、住民への通知文の作成等々、多種多様な文書業務が数多くあります。
それらの文書業務における課題をお聞きしていると、以下のような共通した課題があることがわかりました。

  1. 体裁の手直しや新旧対照表の作成など、人力頼みの作業が多くとにかく時間がかかる
  2. 担当者の異動が頻繁で、組織・部署としての知見・経験の蓄積が難しい
  3. 書面・対面を前提としたフローが多く残っており、効率性が低い

弊社サービスの「LAWGUE」は、これらの課題の解決に貢献できます。

堀口:LAWGUEは、文書業務全般を支援するプロダクトです。例えば、一つひとつ目視でチェックしていた表記ゆれや体裁ずれをシステムがほぼ自動で直したり、数クリックで文書の新旧対照表を作れたり、あとは参考になる文書や過去の変更履歴を簡単に確認できたり…。

今まで時間をかけてやるのが当たり前だった文書関連の煩雑な業務を、独自のAIが搭載されたクラウド上で動くエディタによって、これまでよりも簡単に、短時間でできるようにしています。

石井:こういった機能は、中央省庁や自治体の方々に非常に好評で、実際に、経産省に加えて防衛省とも実証実験を行ったり、複数の地方自治体にご導入いただいたりしています。非効率な業務が改善されているという声が多くあり、中央省庁や自治体の方々がどれほど煩雑な文書業務に煩わされているのかと実感するばかりです。

法令作りの「情報収集」「案文作成」「審査」全てのプロセスを効率化

では、今回の経産省との取り組みの詳細を教えてください。具体的にどういった業務にLAWGUEが活用されているのでしょうか?

堀口:今回は実証実験として、既に施行済みの法案をサンプルにして、実際にLAWGUEで書いてみています。官僚の方が法案を書く業務を再現し、LAWGUEでどのように改善されるのか一つひとつ実演。「ここだったらこういうふうに使えて、時間を削減できそうです」ということを確認しています。

石井:全体の概要をお話しすると、法令の世界にはランク・カテゴリーがあって、一番上が法律、次に政府が出す政令、その下に省で完結する省令・告示となるわけですが、今回は省で完結する省令・告示を対象範囲としました。

法令を作るにあたっては、情報を集めるフェーズ、集めた情報を元に案文をつくったり審査したりするフェーズがあります。
例えば情報を集めるところだと、「この法令を変えると玉つきでこれも変わる」というのが多くあり、現状ではそういうものをエクセルで何千行もの一覧にして、みんなでチェックしています。
また、作成段階でもメールとファイル添付で作業を進めているので、情報が分散されてしまいます。その点、「LAWGUEであれば、民間事業者の法令データベースと連携したり、引用している法令を自動検知したりできるので、チェック作業が簡単になりますよ」とか、「修正のやり取りはシステム内で完結できるので、メールとファイル添付のやり取りがいらなくなりますね」とか、「形式面のチェックは、LAWGUEの自動チェック機能をこんなふうに使えばできますよ」といった提案をさせてもらいました

国から要求されるセキュリティの基準は民間企業とかなり違いがあるかと思いますが、その辺りのお話をお伺いできますか。

堀口:セキュリティに関しては、民間で使用するようなクラウドは使えません。ですので、最初になるべく機密性がない形にデータを加工して、「これだったらシステムに取り込める」というところまで落とし込んだうえで、実証調査を進めました。

加えて、本番環境でのサービス提供にあたっては、セキュリティ対策として、官公庁のシステム基盤にLAWGUEを作り直すことも必要になってきます。こういった対応に地道に取り組んでおります。

LAWGUEを使った法案作成業務のイメージをお伝えした際の反応はいかがでしたか。

堀口:感動していただきました。「こんなに短時間でできるんだ!」「ここに毎日相当な時間を費やしていたよね」といった感じで。
これは、官公庁職員の働き方について研究している外郭団体の方から提供いただいた情報ですが、法案を作成する時期には作業が連日深夜まで及び、紙に印刷して読み上げて、二重三重にチェックするといった業務が行われているそうです。日本の頭脳が夜な夜な疲弊している現実が垣間見え、ぜひLAWGUEが力になれればと感じました。

検証された業務は、経産省はじめ省庁内ではマニュアル化されているものなのでしょうか。

石井:いいえ。法令審査のポイントが書かれた冊子はあるのですが、それを見て簡単に審査できるわけではなくて、やはり「担当者になって初めてOJTで勉強していく」というのが基本のようです。
法令審査は官僚であればどこかのタイミングで必ず担当するらしいのですが、いつの時点でやるか、また経験値も人によってまちまちで、新任の法令審査担当はとても苦労するそうです。明文化された型もないし、法務省など他の省との間での確認も生じるので、現場を多く経験して初めて分かる暗黙知も多く、OJTありきの世界なのだろうな、というのは接していて感じました。

法案作成は絶対に間違いが許されないにも関わらず、OJTメインで業務を覚えていく必要があるというのは、担当する方にとって心理的な負担も大きそうですね。

堀口:おっしゃる通りだと思います。
2021年春には、通常国会における提出法案に多数の誤りがあったことが大きなニュースになりました。今回の取り組みは、LAWGUEが「この問題の解決の一翼を担えるのではないか」ということでお話をいただいた面は大きいです。

AI搭載のクラウドエディタを使うことで、今まで人力でやっていた部分を効率化できるだけでなく、「まだ間違いがあるのではないか」という不安感も軽減できると思います。システムでできることはシステムでやり、業務負荷をどんどん減らして、より価値の高い業務にリソースが割けるようになったらいいですよね。

経産省との取り組みから見えた、LAWGUEが創る未来

ちなみに「省庁では同じシステムを長期間にわたり使っていることが多い」とのことでしたが、新たなシステムの導入に消極的な面があったりするのでしょうか?

石井:そういうことは全くなくて、むしろ新しいシステムも積極的に使おうとしています。業務効率化のためにシステムに合わせてフローを変えていくことも含めて、柔軟に考えてくださりました。

実際に対峙していても全く凝り固まった感じではなく、「皆さんから見ておかしいこと、すなわちシステムだけでなくて、フローやプロセスも含めておかしいところは自分たちもあると思っているので、変えるためにどんどん提案してください」と複数の方に言われたのが印象的でした。

堀口:今回の取り組みで扱ったのは、元々新しいシステムが入る余地がなかったり、官公庁で大きな会社に頼んで何かシステムをつくり、それが数十年ずっと残っているような領域でした。使い勝手の良さそうな新しい民間のシステムに非常に興味を持っていて、自分たちの業務を改革することについても関心の強い方たちだと感じています。実証実験にも、非常に協力的に関わってくださり感謝しています。

今回の実証実験で中央省庁や自治体の文書業務をLAWGUEでより効率化できることが見えた先に、どのような展開を考えていますか?

堀口:国が省庁を横断して霞が関官僚の働き方改革に取り組んでいる中で、経産省との取り組みはモデルケースになるでしょう。先進的な取り組みだと思っていますし、そういう案件にしたいという思いで進めています。

「経産省でこのように使っています」「こういう実証実験をしました」というのを見て、他の省庁や自治体でも「同じ事に悩んでいる」「そのように解決できるのであれば、興味がある」という方が増えました。関心の高さをひしひしと感じています。

今、経産省との取り組みをきっかけに、デジタル臨時行政調査会(政府の検討会議)でデジタル化・DXについて提言させていただいています。こういった場でも経産省での取り組みは注目を浴びています。

民間企業では、自社や外部環境の変化に合わせてより便利な新しいサービスを取り入れていくのは当たり前ですよね。ですが、官公庁ではセキュリティ面の問題などもあり、一度入れたシステムを長く使い続けることが多い。こうした中で、どうしても過去に構築されたシステムが今の業務環境に合わず、本来できるはずの効率化ができない場面もままあるのかなと思います。

結果として長時間労働になってしまい、省庁は激務であるというイメージを持つ人も増えているのではないでしょうか。実際、国の中枢を担うやりがいのある仕事であるにも関わらず、官僚を志望する人、つまり国家公務員試験を受ける人が大幅に減少しているというデータもあります。

法案の作成・審査をはじめとする文書作成業務は、官僚が激務になる一因です。一方で、この書類を作る仕事こそが、国の仕組みを回していく中で非常に重要なものだと考えています。これを改善していくことで、霞が関の働き方は変化していくのではないかと。こうして文書作成の中でも付加価値の高い部分に労力を割けるようになれば、官僚は再び非常に魅力的な仕事になっていくはずです。

これは結果的には産業競争力、大きな話でいえば日本の競争力、国力の向上につながるものです。そういった意味で、すごく社会的意義のある取り組みだと思っています。

だからこそ我々FRAIMは「文書作成に関する業務改革・業務のあり方を変えていく、それは決して民間だけではない」と訴えたいです。最も書類仕事に時間を使っている人たちの一つがパブリックセクター=公共部門なのだから、そこに対して企業として何らかの努力をしていくべきではないか。そういった発想で取り組んでいますし、今後は他の省庁への横展開などにも注力していきたいです。

石井:経産省との実証実験が始まるまでにも、実は数年かかっています。今は状況が変わりつつありますが、入札要件などから中央省庁と取引するのは基本的に大手企業。そこに設立から数年の当社のような企業が入っていくだけでも苦労があります。また、官公庁の予算は国の事業年度で国会に提出して承認されるというプロセスがあるので、実際に事業化できるのは、企画してから何年後なのかということも考えなければなりません。

さらに、ただ「良い」というだけで使ってもらえるわけではなく、「なぜこの会社のこの製品を使う必要があるのか」ということをきちんと説明できなければいけないのが官公庁の調達です。そういった提案内容の作り込みにもかなりの時間をかけて取り組んできました。民間企業と比べて実際に取引するまでに時間がかかる中、我々ができることは、いただいた質問に粛々と答え、LAWGUEによってどう課題を解決できるのか伝えていくことでしたね。

これだけ多くの時間をかけて注力してきたのは、何よりも中央省庁の文書管理を改革するという社会的意義の高い取り組みを、我々がやらねばならぬという気持ちがあるからです。我々は「文書作成を、再発明する」というビジョンとして掲げています。その実現のために、パブリックセクターへ導入され、広がっていくことは、非常に重要だと考えています。

――ありがとうございました。

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