契約書の書き方完全ガイド!テンプレート例と管理のポイント

LAWGUE編集部
契約書の書き方完全ガイド!テンプレート例と管理のポイント
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会社間の取引、個人での取引を含めて、契約書に触れる機会は少なくありません。契約書の内容に問題があったり、契約当事者双方の認識に齟齬があったりするままに契約を締結すると、後にトラブルとなる可能性があり、また自社に不利益な結果を招くこともありえます。

しかしながら、弁護士など専門ではない方にとってどのような点に留意すべきなのかについて十分に理解するのは容易ではありません。
この記事では、契約書の基本的内容や、契約書作成・締結までの流れ、契約書を作成する際の重要なポイントやよくあるミス、契約書管理のポイントなど、契約書の書き方について解説します。

契約書とは?基本的な理解と重要性

契約書は、取引当事者間で合意した内容を文書化したものであり、基本的にその内容には法的な拘束力があります。契約書を作成することで、当事者双方の権利と義務が明確になり、トラブルを未然に防ぐことができます。

契約書が必要な理由

日本では、契約は基本的に口頭の合意でも成立するため、契約書面を作成することは必要不可欠ではありません。

もっとも、契約書は、合意内容を客観的な形で記録化し、「言った」「言わない」という紛争を防ぐために必要なものです。後に取引内容についての認識に齟齬が生じるなど、紛争化した場合には、合意内容を立証するためにきわめて大きな証拠ともなります。

契約方法の種類

契約方法には、いわゆる口約束(口頭契約)、紙の書面に署名押印して締結する書面契約、電子メールやインターネット上でサインすることにより締結する電子契約などがあります。これまでの契約実務においては、書面契約が最も一般的でした。

契約書作成の基本的な流れ

契約書作成の基本的な流れは、主な契約内容(契約条件)について協議をし、大きな方向性を合意した上で、いずれかの当事者が契約書の素案(ドラフト)を用意します。相手方がその内容を検討し、細かい点も含めた契約条項についての協議(契約書案の修正)をした上で、すべての内容について合意に至れば、契約書の締結となります。
契約書の締結は、双方が契約書原本に署名・捺印を行うことで完了します。

契約内容の確認

大枠での契約内容、主要な合意内容に齟齬があると、そもそも契約の締結が見込めません。
そのため、契約書の書き方としては、素案(ドラフト)を作成する前に、大枠での契約内容・契約条件について協議を行った上で、双方の求める契約内容に大きな溝がないかを確認します。

契約書案の作成

通常は、合意した大枠の契約内容をベースとして、契約当事者のいずれかが契約書の素案(ドラフト)を用意します。

契約書のテンプレートなどを活用する際には、これから締結しようとしている契約の内容に合わせて適切に修正することが重要です。テンプレートなどは、その案件では必ずしも自社に有利な内容になっているとは限りません。法令で認められないような契約条項(時代遅れの契約条項)が入っていることも少なくないため、注意が必要です。

契約書案の確認・修正

取引相手から受領した契約書の素案(ドラフト)を検討した上で、必要に応じて契約条項の趣旨を確認したり、修正を求めたりします。

契約交渉時における契約書案(ドラフト)の修正のやりとりにおいては、自社にとって有利な修正を求めることになりますが、実務上は、相手方にその意図が分からないような形で修正提案を行うことも少なくありません。

もっとも、最終的には、双方が合意した内容が契約に適切かつ十分に反映され、両者の認識に齟齬がない状態にすることを目指して合意形成していくことが重要です。

契約書の締結

契約書の素案(ドラフト)についての協議や修正提案のやり取りを何度か行った上で、細かい条件も含めて合意に至った場合には、双方が署名・捺印を行うことで契約締結をします。

契約を締結する上では、双方が合意した内容が契約に適切かつ十分に反映されているか、両者の認識に齟齬がない状態となっているかを徹底的に確認した上で契約を締結することが必要です。また、双方が、契約締結権限を有する担当者か、そのような権限者から有効な委任を受けた当事者が契約締結手続きを適切に実施することが必要となります。

契約書の基本構成要素

契約書の書き方として、まずは基本構成要素を知っておきましょう。基本構成要素としては、タイトル(表題)、前文(契約目的)、契約条項本文、日付、署名・捺印などがあります。

タイトル(表題)の付け方

契約書のタイトルは、契約内容を簡潔に表現するものであり、契約書の種類や内容が一目で分かるように、簡潔で明確なタイトルを使用することが推奨されます。
なお、注意すべきは、契約の性質や内容はあくまで契約条項の内容によって決まるのであり、タイトルによって決まるわけではないということです。

たとえば、ある製品の引渡しを求める取引としては、当該製品の売買契約(民法上の売買)や、当該製品の製造請負契約(民法上の請負)、製造委託契約(民法上の準委任)などが考えられます。
契約書のタイトルに「売買契約」と書かれていたとしても、契約条項の本文を見てみると「製造委託契約(請負契約)」であるという場合には、契約の性質は「準委任・請負」ということになります。

また、請負と準委任とでは、その成立要件や効果(責任追及期間を含む)に大きな違いがあるため(一般的には、請負のほうが受注者側の負担が大きく、準委任のほうが受注者側の負担が小さい)、法的性質がどちらになるかは重要な問題です。そのため、契約条項本文を見て判断する必要があります。

前文の書き方

前文は、契約の背景や目的、契約する動機、契約締結に至る経緯を説明する部分です。具体的には、当事者名やどのようなことを内容とするどのような内容を締結するのかを端的に記載した上で、必要に応じて、なぜこの契約を締結するのか(たとえば、賃貸用マンションを建設するためにその敷地とする土地の売買契約を締結するなど)を記載しましょう。

全文を記載することは必要不可欠ではありません。前文のない契約も多いです。
もっとも、契約の目的を記載しておくと、たとえば提供されたサービスや引き渡された目的物に問題があった場合に、契約の目的からして受注者側(売主側)に責任を追わせることができるものなのかを判断する大きな材料となることがあります。

本文(約定事項)の作成

次に、契約内容の中心を担う本文の書き方です。
本文は、契約の具体的な内容を記載する部分であり、契約書の中核部分です。当事者双方の権利や責任・義務、報酬金額、支払い条件などが含まれます。

また、機密保持、紛争解決、契約解除の条件なども記載されることが一般的です。条項の並び方に決まりはありませんが、よく見られるパターンとしては、契約の目的、契約上の義務内容(引き渡す目的物の内容、提供するサービスの内容など)、対価・報酬の金額・支払い方法の順で規定した上で、そのほかの一般条項(損害賠償、解除、反社など)、準拠法・裁判管轄という並びとする例がみられます。

具体的な条項例については後述します。
後に紛争となることを避けるためには、できる限り具体的に合意内容を規定する必要があります。

後文(末文)の記載

後文は、契約の締結を確認する部分であり、紙の書面または電子契約で締結することや、原本を何通作成し、誰が保管するのかなどを記載します。
一般的には、契約当事者が 2 名であれば、原本を 2 通用意してそれぞれに署名押印したものを、それぞれが一通ずつ保管することになりますので、その旨を記載します。

日付の記入方法

日付は、契約が合意された日や契約の有効期間を明確にすることなどを目的として記入します。契約の有効期間について、「契約締結の日から●年間」などと記載された場合には、契約の締結日付がその起算点となります。

なお、契約の締結日付をバックデートした場合には、記載された日付が実際に合意した日付と異なることがありますが、契約はあくまで合意が成立した時点が基準となるため、注意してください。

署名・捺印の正しい方法

署名・捺印は、本人によって契約が有効に締結されたことを証明するために重要なものです。
特に、署名・押印がなされた文書が訴訟に証拠として提出された場合には、とりわけ重要な役割を有します。

文書を証拠として提出する場合には、当該文書が作成名義人の意思に基づいて作成されたものであることを証明する必要があります。しかし、本人またはその代理人がその意思に基づいて署名または押印を行ったことが証明された場合は、当該書面が作成者の意思に基づいて作成された(文書が真正に成立した)ものと推定されるのが通常です。

これに対して、書面に本人の押印がなされている場合であっても、推定を覆す事情がある場合は、推定が覆り、文書の成立の真正が認められない場合があります。
推定を覆す事情とは、たとえば、印章の紛失・盗用・目的外使用などによって他人が自由に印章を使用できる状況であった場合や印章が複数人で共用されていた場合など)です。

契約書作成の重要ポイント

実際に契約書を作成する際には、

(1)テンプレート活用の注意点に留意する
(2)リスク対応条項を適切に設けること
(3)契約条項について法的整合性の確認を行うこと
(4)契約条項の表現としてわかりやすい文章を作成すること
(5)記載された契約内容について当事者間での内容確認

それぞれを徹底することが重要です。

テンプレート活用の注意点

契約書を作成する際に、インターネット上で公開されているテンプレートや文献の契約書式例などを利用するケースは少なくありません。また、会社内で利用しているテンプレートや、過去の案件で実際に使用した契約書を利用することもあります。

これらのテンプレートなどを活用する際には、これから締結しようとしている契約の内容に合わせて適切に修正することが重要です。
テンプレートなどは、その案件では必ずしも自社に有利な内容になっているとは限りません。

たとえば、ある製品の売買契約を売主側として締結しようと考えている場合、利用する売買契約のテンプレートが買主に有利な内容となっていることもあります。
特に、過去の案件で実際に使用した売買契約であっても、それが買主側で締結したものであれば、基本的に買主に有利な契約書となっているはずです。

そのため、そのまま使うと売主側として締結しようとする今回の契約としては不利なものとなってしまいます。
また、後述するとおり、法令で認められないような契約条項となっていないかも慎重に確認する必要があります。

リスク対応条項の記載

リスク対応条項は、契約におけるリスクを管理するために記載するものです。
契約上の責任や義務を規定した条項のほか、想定とは異なる事態となった場合の取扱い(瑕疵担保責任条項、契約不適合責任条項)、損害賠償・負担割合、契約終了事由や終了時の取扱い、またはこれらの責任や義務を免れるための免責条項などが主な内容となります。

なお、契約書にはあらゆる事項について何から何まですべてを盛り込まなければならないというわけではありません。契約書に規定のない事項については、民法などのデフォルトルール(法令などの一般的なルール)が適用されます。

そのため、契約書案(テンプレート)にある契約条項がデフォルトルールよりも自らに有利なのか不利なのか、また契約中に何も規定していないことが自らに有利なのか不利なのかを判断した上で、契約条項をどのように改訂すべきなのかを検討する必要があります。

リスク対応条項についても、デフォルトルールのままでよければ契約書の修正は不要です。
他方で、デフォルトルールにはリスク対応条項に該当するものがないこともあり、そのままでは自社に不利な場合には、リスク対応条項を追加・修正する必要があります。

ただ、契約上の規定を設けなかった場合に適用されるデフォルトルールをすべて適切に把握することは難しいといえます。そのため、実際には、特にリスクを意識しないままに契約書の検討をしてしまい、自らが望まないデフォルトルールが適用されてしまうという事態が数多く生じているというのが実態です。

法的整合性の確認

契約書の内容は基本的に当事者が自由に規定することができますが、法的に有効なものである必要があります。

たとえば、下請代金支払遅延等防止法(以下、下請法)や建設業法の対象となる契約、産業廃棄物の処理委託契約、一定の保証契約など、必ず契約書そのほかの書面に記載しなければならない事項が法律で決められています(法定記載事項)。
法定記載事項が適切に記載されていなければ、法律上の要件を満たさないことになるため、注意が必要です。

そのほかにも、法令に照らして無効となる条項がないかを確認する必要があります。たとえば、免責条項が公序良俗に反するような内容である場合や、消費者契約法の適用がある取引(事業者と消費者の間での取引)では、民法で規定される権利よりも消費者側に不利な特約が無効と判断されることがあります(消費者契約法10条など)。

また、法令の改正によって、それまでは認められていた特約が無効となる場合もあるため、注意が必要です。改正前の法令に従った従前の契約書をそのまま使用し続けると、当該契約条項が無効となってしまうことがありえます。

たとえば、2020年に改正された民法では、個人が建物賃貸借の債務保証をする場合には保証極度額の上限を契約に明記しなければなりません。極度額が設定されていない保証契約は無効となります。

従前一般的に使用されていた建物賃貸借契約書では、保証人が負う責任について極度額を設定することは一般的でなかったことから、従前の契約書をそのまま使用し続けた場合には、当該契約書は無効なものとなってしまうのです。

わかりやすい文章作成のコツ

一般的な契約書は、独特の言い回しがあったり、法律的な難しい表現が使用されていたりするものが多く見られます。しかしながら、双方が合意した内容が契約に適切かつ十分に反映されているかどうかが判断できないものであれば、両者の認識に齟齬が生じてしまい後に紛争になることもありえます。
また、後述するように、曖昧な表現の使用によって紛争化してしまうおそれも否定できません。

そのため、形式張った難しい表現を無理に使用するよりも、誰が見ても一義的に解釈できるわかりやすい表現で条項を作成することで、契約内容が相手方に正確に伝わるようにすることが重要です。

当事者間での内容確認の徹底

いずれの当事者も、契約内容を徹底的に確認することが重要です。
特に、契約交渉時における契約書案(ドラフト)の修正のやりとりにおいては、自社にとって有利な修正を求めることになります。しかし、自社にとって有利(相手方にとって不利)になるような修正を露骨に要請しても受け入れられることはあまり期待できません。

そのため、実務上は、相手方に分からないような形で修正提案がなされることもよくあります。そのような場合には、修正提案の内容や意図を十分に確認していないと、知らないままに自社に不利な契約が成立してしまいかねません。

複数ページの契約書の取扱い

複数ページの契約書は、ページ番号を付けることが重要です。
契約条項が全何条あるのか、全何ページあるのかわからないと、取引相手から後で分からないように追加条項が付け加えられるリスクもあります。そのため、全ページ中の何ページなのかが分かるようにページ番号を付したり、無断で条項を追加できないように最後の条項のすぐ後に「以下、余白。」などと記載したりすることも大切です。

電子契約の活用検討

電子契約とは、紙ではなくデータ(電磁的記録)により作成された「契約書」をいいます。
電子契約に対して行われる「署名」の方式は多様であり、紙で作成された契約書に対して行われる署名・押印に類似したもの(例えば、タッチパネル上に指やペンを用いて署名を行う方法や作成名義人の署名や印影の画像データを貼り付ける方法など)のほか、「ディジタル署名」を用いた方法もあります。

契約書の書き方のポイントは紙のものと同じですが、電子契約を活用するメリットは少なくありません。

まず、紙で作成された契約書の場合、一定の類型の契約書については、定められた額の収入印紙を貼付する必要がありますが、電子契約については、現時点では収入印紙の貼付は不要とされています。
また、印刷・製本、相手方への交付・郵送などのオペレーション削減による生産性や効率性の向上が期待でき、リモートワークが主流となる状況においては導入に向けての一定の動機となりえます。

加えて、成立した契約書をバインダーやキャビネットなどで保管する必要がなくなり、物理的設備も不要です。
さらに、組織内における契約書や契約内容の一元管理が可能となり、管理作業やコストが削減されるという利点もあります。

ただし、紙の契約書を締結する場合であっても同様ですが、契約の成立の真正が争いとなる可能性や、なりすまし、あるいは無権限者による署名・押印がなされるリスクを完全には排除することはできません。むしろ、電子契約の利便性ゆえに、なりすましリスクが高まることも考えられます。

多要素認証などの仕組みが備わっているような場合であっても、それのみでは直ちに当該措置を行う者が会社内において契約締結権限を有していることが担保されているとはいえません。そのため、契約の相手方担当やの契約締結権限や必要な社内手続きを確認する必要があります。

他方で、自社内においても、電子契約に係る措置(電子サインなど)を濫用できないような仕組みが必要です。紙の契約書を前提とした契約締結のための社内稟議の手続きや印章の管理およびこれらについての社内体制・規程の整備に関する枠組みを、電子契約の導入を前提として改定することも検討すべきでしょう。

実務上は、無権限者による契約締結が行われたとしても比較的インパクトが小さい類型・金額の契約については電子サインによる締結を可能とする一方で、一定程度以上の重要度が高い契約や金額の大きい契約については電子署名やタイムスタンプを付与することを必須とするなどの使い分けを行う例も見られます。

契約書管理のベストプラクティス

契約書管理としては、紙の契約書の保管方法、電子契約書の管理方法でそれぞれ整理する必要があるほか、共通の問題として契約更新・期限管理を行うための仕組みを検討する必要があります。

紙の契約書の保管方法

紙の契約書は、一般的に契約の当事者双方が原本を物理的に保管することになりますが、紛失を防ぐことが重要です。
そのため、成立した契約書をバインダーで整理した上で、キャビネット内で保管・管理することが必要となります。また、契約書原本をスキャン読み取りした上で、PDF などで管理するケースもあります。PDFなどのデータで管理する場合には、電子契約書と同様に、クラウドのストレージや契約書管理ソフトウェア、契約書管理サービスを利用する例も多く見られます。

保管期間については、契約書だけでなく契約交渉時のやりとりに関するデータについて時効期間(責任追及期間)が経過するまでは保管を継続することを検討すべきです。特に重要な契約については無期限保管とすることもあります。

電子契約書の管理方法

締結された電子契約書は、クラウドのストレージや契約書管理ソフトウェア、契約書管理サービスを利用するのが一般的です。場合によっては、データを社内のサーバで管理することもあります。紙の契約書をバインダーやキャビネットなどで保管する必要がなくなることから、物理的設備が不要となり、管理作業やコストが削減されることになります。

また、ファイル名に適切な名前を設定することにより、検索機能を活用して必要な書類を迅速に取り出すことができるようになります。契約書の管理サービスの中には、契約書の内容や修正履歴を一元的に管理することが可能なものもあります。

なお、一般的には、紙の契約書を前提とした印章(ハンコ)については印章管理規程を定めて管理を行っている例が多いと思われますが、電子契約を導入する場合も同様に、電子契約の利用に関する社内規程を整備する必要があります。

特に、契約書データが漏洩したり、ランサムウェアによる被害を受けたりする例が急増しています。このような事態が生じると行政に対して速やかに報告する必要があるほか、対外的な信用が大きく低下するおそれがあります。そのため、個人情報や秘密情報が記載された契約書を含め、セキュリティ対策には万全を期しておく必要があるほか、バックアップを適切にとっておくこともきわめて重要です。

契約更新・期限管理の仕組み

紙の契約書であっても電子契約書であっても、契約期間がいつ終了するのかを確認することはきわめて重要です。たとえば、契約期間が終了すると、契約書で合意した義務から免れることがある反面で、権利も消滅してしまいます。
もっとも、一部の条項においては、契約終了後も引き続き有効に存続すると規定されていることがありますので(いわゆる存続条項)、注意が必要です。

他方で、契約書に自動更新条項などがあると、契約終了までになんのやりとりをしなかったとしても自動的に契約が更新されてしまいます。そのため、契約を打ち切りたければ契約更新をしないための手続き(事前通知など)を行うことが必要です。

また、電子契約書や関連資料のデータをいつまで保管するのかを決めておく必要があります。紙の契約書と比較して管理コストが減るといっても限度があるからです。
特に気をつけなくてはならないのは、時効期間の管理でしょう。たとえば、損害賠償責任の時効が 20 年間となる契約について、その期間が経過する前に契約書データを破棄してしまった場合、裁判そのほかの紛争になったときに契約内容を立証するための契約書そのものがなくなってしまうということにもなりかねません。

そのため、契約金額が大きい場合や特に重要な契約については、契約交渉時のやりとりに関するデータについては時効期間が経過するまでは保管を継続することを検討しなければなりません。

契約書作成でよくあるミスと対策

契約書の書き方をはじめ、契約書作成でよくあるミスには、
主に、

(1)曖昧な表現の使用
(2)重要条項の欠落
(3)法的要件の不備

などがあります。

曖昧な表現の使用

前述のとおり、一般的な契約書は、独特の言い回しがあったり、法律的な難しい表現が使用されていたりするものが多く見られます。
しかしながら、使われている表現が、双方が合意した内容が適切に反映されているかどうかが判断できないものであれば、両者の認識に齟齬が生じてしまい後に紛争になることもありえます。

また、曖昧な表現を使用したことによって紛争化してしまうことも否定できません。
たとえば、土地や建物の売買契約において、「売主は土地建物を現状有姿で引き渡す」という条項が一般的によく見られます。

しかしながら、売買契約後に土地中から土壌汚染や建物からアスベスト汚染が発見された場合、売主としては、土地建物を「現状有姿」でそのままの状態で引き渡すことが契約内容として合意されているのであるから、その後に汚染が発見されたとしても、それを処理する義務も処理費用を負担する義務もないと主張するかもしれません。

これに対し、買主としては、「現状有姿」で引き渡すことだけを合意したのであり、これを除去する義務や対策費用を負担する責任を免除したわけではないと主張するでしょう。
このような条項は一般的に見られる条項であり、特に意識をしないままに契約条項として規定することも多いと思います。

しかし、上記のような当事者の言い分を想像して紛争となる可能性やリスクを把握できないと、そもそもそのような条項を規定すべきかどうか、どのように修正すべきかという問題意識を持つことすらできません。
そのため、契約条項がどのように争われるかを認識することはきわめて重要となります。

重要条項の欠落

そもそも重要な条項が漏れてしまうと、契約後に重大なリスクを負う可能性があります。
前述したリスク対応条項も重要な条項といえます。特に、契約上の責任や義務を規定した条項のほか、想定とは異なる事態となった場合の取扱い(いわゆる瑕疵担保責任条項、契約不適合責任条項)、損害賠償の取扱い、契約が終了する場合の取扱い、またはこれらの責任や義務を免れるための免責条項などが重要です。

前述のとおり、契約書に規定のない事項・不明確な事項については、民法などのデフォルトルール(最も一般的なルール)が適用されるということになります。そのため、特に意識しないままに重要な条項が欠落すると、自らが望まないデフォルトルールが適用されてしまうという事態が生じかねません。

法的要件の不備

前述のとおり、下請法や建設業法の対象となる契約、産業廃棄物の処理委託契約、一定の保証契約など、必ず契約書その他の書面に記載しなければならない事項が法律で決められています(法定記載事項)。法定記載事項が適切に記載されていなければ、法律上の要件を満たさないことになるため、注意が必要です。

また、契約書を作成・審査する場面で、「どのような契約条項がトラブルになり、裁判所でどのような判断がなされる傾向があるのか」がわからないと、契約書のどの点をどのように確認すればいいのか、どのように改訂すればいいのかわかりません。

契約書案(ドラフト)を検討する際に、相手方が用意した契約書案に一見にしておかしな条項が存在するのであればまだ注意のしようもあります。しかし、実際にはそのようなケースは多くはありません。ましてや、通常あるべき条項が存在しないことについては、そもそも気づかないという事態が生じやすいといえます。

そのため、契約類型ごとにどのようなトラブルやリスクがあるのかを具体的に把握する必要があり、その上で、契約文言が裁判所でどのように解釈されるかを把握しておく必要があります。

契約書を書くときのルールは?

契約書の書き方としては、ここまで説明してきた内容を適切に実践することが必要です。
まずは、法的要件を満たすことや重要条項を漏らさないことは、必要最低限として求められます。締結しようとしている取引契約に必要な事項(法定記載事項など)が漏れなく規定されているか、法令や判例に反するような条項がないかを確認することが必要でしょう。そのためには、法令や判例などから導かれるルールをしっかりと把握しておくことが必要です。

また、自社が契約で求める内容をしっかりと反映させること、後に紛争とならないような曖昧な表現は避け、一義的に明確な表現とすることが重要です。

もちろん、自社の要求が受け入れられないような内容であれば、あえて提案せずに、意図的に曖昧にしておくということもあり得ます。その意味で、戦略的に契約条項の修正提案をしていくことが重要です。

契約書の基本構成は?

契約の基本的な構成要素は上記のとおり、タイトル(表題)、前文、本文(約定事項)、後文、日付、署名です。各構成要素の役割・ポイントについては前述のとおりです。

特に重要な契約条項例(約定事項)のとしては、

  • 契約の目的
  • 義務内容
  • 対価の支払い方法
  • 禁止事項
  • 損害賠償
  • 解除
  • 契約の有効期間・更新
  • 秘密保持
  • 紛争処理
  • 準拠法、管轄

などがあります。

まとめ

契約書は、後に紛争を避けるためにきわめて重要なものであり、万が一紛争が生じた場合に自社に有利な結果を導くためにも重要なものとなります。

契約書を作成するにあたって、その取引においてどのようなトラブルが想定されるのか、そのためにどの条項をどのように修正すべきなのかを慎重に検討して、相手方としっかりと協議の上で合意をし、その内容を契約条項に適切に反映させることが必要です。
今回解説した書き方を、ぜひ参考にしてください。

よくある質問

契約書の書き方のルールはありますか?

契約書の書き方として、まずは、法律上求められる要件を満たすことや重要条項を漏らさないことが、必要最低限のルールとなります。

そのうえで、自社が契約で実現しようとしている内容、相手方に求める内容を適切に反映させることが重要です。また、いろいろな受け取り方や読み方ができてしまうような曖昧な表現は避け、誰が読んでも一義的に明確な表現としましょう。

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LAWGUE編集部

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