契約書DXとは?法務DXの推進方法とメリット・価値を徹底解説

LAWGUE編集部
契約書DXとは?法務DXの推進方法とメリット・価値を徹底解説
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契約業務におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業の法務体制の効率化と高度化を実現する重要な取り組みです。特に「契約書DX」は、契約書の作成・締結・管理といった一連の業務を革新し、企業価値の向上に直結する手段として注目されています。

本記事では、契約書DXの定義や法務DXとの関係性、導入ステップや得られるメリットまでをわかりやすく解説します。

契約書DXとは

契約書DXとは、契約書の作成・レビュー・締結・保管・管理といった契約業務全体を、デジタル技術を活用して効率化・最適化する取り組みです。従来の契約業務は、紙への印刷、押印、郵送、ファイリングといった手間がかかり、時間的ロス・ミス・情報の分散といった課題が生じやすいと言えます。

これに対し、契約書DXとして電子契約サービス、クラウド型の契約管理システム、ワークフローの自動化などを導入すれば、スピードの向上・コスト削減・コンプライアンス強化を実現できます。単に電子化するのではなく、契約プロセス全体をデジタル前提で再構築するのが特徴です。

契約書DXの定義と目的

契約書DXとは、契約書の作成・レビュー・締結・保管・管理・更新といった一連の契約業務プロセスを、デジタル技術を活用して抜本的に効率化・高度化する取り組みを指します。
単なるペーパーレス化ではなく、業務フロー全体を見直し、システムによる自動化・標準化を進めることで、法務部門や関連部署の生産性を飛躍的に向上させるものです。

企業が契約書DXを導入する目的は多く、

  1. 契約締結までのリードタイム短縮、
  2. 印紙税や郵送費などのコスト削減、
  3. 契約情報の一元管理によるデータ活用と迅速な経営判断、
  4. 業務の属人化排除とコンプライアンスの強化、
  5. 監査や内部統制対応の簡素化

などが挙げられます。

目的を明確にし、戦略的に取り組むことが、契約書DXを成功させる鍵となります。

契約書DXと電子契約の違い

契約書DXと電子契約は混同されがちですが、両者は明確に異なります。電子契約は、紙の契約書に代わって電子ファイル上で契約を締結する技術的手段であり、契約書DXの一部分にすぎません。

一方、契約書DXは、契約書の作成からレビュー・承認・締結・管理・更新に至るまでの契約ライフサイクル全体を対象とする包括的な概念です。つまり、電子契約は「手段」、契約書DXは「全体戦略」といえます。
契約書DXの目的は単に電子化することではなく、契約に関する業務全体を最適化し、企業の法務機能を高度化することにあるのです。

法務DXと契約書DXの関係性

契約書DXは、法務業務全体のデジタル化を目指す「法務DX」の一領域に位置づけられます。法務DXは、契約業務に限らず、リスク管理、コンプライアンス、知的財産管理など幅広い業務の効率化・高度化を目的とするものです。

その中で契約書DXは、契約業務の中心的な改革手段として重要な役割を果たします。両者は密接に関連しつつも、スコープとアプローチに違いがある点に注意が必要です。

法務DXの概要とスコープ

法務DXとは、企業の法務部門における業務全体をデジタル技術によって改革し、効率化と高度化を図る取り組みを指します。

対象となる業務は下記のようなものが含まれます。

  • 契約業務
  • リスクマネジメント
  • コンプライアンス対応
  • 訴訟対応
  • 知的財産管理
  • AIによる契約書レビュー
  • ナレッジ共有のための法務データベース、
  • 法務相談対応のチャットボット導入

単なるIT導入ではなく、法務機能を企業の戦略的基盤へと転換するための施策として注目されています。

リーガルテックと契約書DX

リーガルテック(LegalTech)とは、法律業務にテクノロジーを活用することで、業務の効率化や精度向上を実現するソリューションの総称です。

契約書DXは、まさにリーガルテックの中核的分野の1つであり、電子契約・AIによる契約書レビュー・クラウド型契約管理システムなどが具体例です。
これらの技術により、従来は専門性と時間を要していた契約業務を自動化・標準化でき、法務部門のリソースをより戦略的な業務へと振り向けることが可能になります。リーガルテックの進化が、契約書DXの推進を大きく後押ししています。

契約書DXによるビジネス価値

契約書DXは、業務効率化に加えて、企業に以下のような具体的なビジネス価値をもたらします。

  • 契約締結までの時間を約80%短縮(7日→1〜2日)
  • 印紙税の削減で年間数十万円〜数百万円のコスト圧縮
  • 郵送費・保管費などの事務コストを最大90%削減
  • 契約更新漏れや条項ミスの防止によりトラブル件数が減少
  • 属人化の排除により業務の標準化と再現性が向上

これらにより、契約業務の質とスピードが飛躍的に向上し、企業の競争力強化に直結します。

業務効率化と時間短縮

契約書DXによって最も顕著に表れる効果が、業務効率の向上と契約処理にかかる時間の短縮です。紙ベースの契約書では、印刷・押印・郵送・返送・保管といった煩雑な工程を経る必要があり、締結までに数日から1週間以上を要することも珍しくありません。

これに対し、電子契約と自動ワークフローを組み合わせることで、締結までの期間が数時間〜1日程度にまで短縮されるケースが増えています。たとえば、ある企業では、年間1,000件の契約締結にかかっていた事務作業時間が、契約書DX導入により80%削減されました。これにより、法務部門や営業部門の負荷が大幅に軽減され、より付加価値の高い業務へと注力することが可能となります。

コスト削減効果

契約書DXの導入は、企業のコスト削減にも大きく貢献します。従来の紙契約では、印紙税(1契約あたり最大数万円)・郵送費・印刷費・書類の保管スペースにかかる費用・人件費など、見えづらいながらも多くのコストが発生していました。

電子契約を導入すれば、印紙税が不要になるケースが多く、郵送や保管にかかる物理的コストも不要です。たとえば、年間1,000件の契約を取り扱う企業が契約書DXを導入したことで、年間300万円以上のコスト削減を実現した事例も報告されています。

リスク管理の強化

契約書DXは、リスク管理体制の強化にも大きく貢献します。たとえば、契約書の有効期限や自動更新条項をシステムで一元管理し、期限が近づくと自動でアラート通知を行うことで、更新漏れによる契約失効リスクを回避できます。

またAIによる条項チェック機能を活用すれば、秘密保持条項や損害賠償条項の記載有無・内容の妥当性を自動で確認でき、人為的な見落としを防ぎます。
さらに、改ざん防止機能付きの契約管理システムや全文検索機能により、証拠性や可視性も向上します。デジタル技術の活用は、企業のコンプライアンス体制の強化とトラブル予防にも直結するのです。

契約書DXの推進ステップ

契約書DXを効果的に進めるには、段階的なアプローチが不可欠です。以下のようなステップを踏むことで、現場の混乱を抑えつつ着実に導入を進めることができます。

  1. 現状分析と課題の洗い出し
    契約業務の全体像を可視化し、属人化・非効率・紙運用の残存などの課題を整理する。

  2. 目的設定と理想の業務フローの設計
    「なんのためにDXを進めるのか」を明確にし、最終的に目指す契約フローの在り方を描く。

  3. システム選定と導入準備
    業務に合った電子契約や契約管理システムを選定し、トライアル導入や操作研修を行う。

  4. 社内展開と運用開始
    全社的な展開に向けて体制を整備し、対象部署への導入・運用を開始する。

  5. PDCAサイクルの実行と改善
    運用状況を定期的に評価し、業務フローやシステム設定の見直しを行いながら改善を続ける。

これらのステップを順に踏むことで、無理なく契約書DXを推進しましょう。

現状分析と課題の洗い出し

契約書DXの第一歩は、自社の契約業務の現状を正確に把握することです。
まずは、契約書の作成・レビュー・承認・締結・保管・更新といった一連のプロセスを時系列で可視化してください。
そして、各段階に関与する部署や担当者、使用しているツール、所要時間、判断基準などを整理します。

その上で、業務の属人化・紙による運用の残存・業務の重複・承認の遅延・入力ミスの多発といった課題を抽出します。
例えば、契約書の保存場所が部署ごとに異なっていて検索に時間がかかる、契約更新の通知が手動で管理されており漏れが発生しているといった具体的な問題も見つかることが多いです。

課題を一覧化し、業務への影響度や緊急性に応じて優先順位をつけることで、DX化によって解決すべき焦点が明確になり、効果的な施策につながります。

目的設定と理想のフロー設計

契約書DXを効果的に推進するには、「なぜDXに取り組むのか」という明確な目的設定が不可欠です。目的は抽象的ではなく、現場の課題と直結した具体的な内容とすることが重要です。例えば、「契約締結までの平均所要日数を7日から2日に短縮する」「紙契約の比率を1年以内にゼロにする」「契約更新漏れをゼロにする」など、定量的な目標が望まれます。

目的が定まったら、理想的な契約フローを設計しましょう。たとえば、契約書の作成・レビュー・承認・締結・保管・更新といったプロセスをすべて電子化し、承認フローには自動ワークフローを組み込むことで、ヒューマンエラーを最小限に抑え、業務の透明性と再現性を確保できます。

また、契約情報を一元管理することで、経営判断のスピードと正確性も大幅に向上するでしょう。目的と設計の整合性がDX成功の鍵を握ります。

システム選定と導入

契約書DXを実現するためには、自社の契約業務に最適なシステムの選定と、段階的かつ円滑な導入が欠かせません。

まずは、契約フローや抱える課題に対し、どのような機能が必要かを明確にします。

選定時のチェックポイントには、

  1. 電子契約機能の有無、
  2. 契約書のバージョン管理や全文検索機能、
  3. 社内外の承認フロー設定機能、
  4. アクセス権限管理やセキュリティ体制、
  5. 既存の業務システムとの連携性、

などがあります。

導入段階では、いきなり全社展開するのではなく、一部部署でのトライアル導入を行い、実際の業務運用で生じる課題や操作性を検証することが重要です。その上で、マニュアル整備や運用ルールの標準化を進め、段階的に全社展開することで、現場の混乱を最小限に抑えながら、着実にDXを推進できます。

社内展開とPDCAサイクル

契約書DXを全社的に定着させるためには、段階的な社内展開と継続的な改善活動も不可欠です。
まず、導入するシステムや新しい業務フローについて、関係部署に対する丁寧な説明と操作研修を実施しましょう。その上で、現場からのフィードバックを受け取りやすい体制を整え、運用上の課題を随時把握できるようにします。

運用開始後は、KPI(例:契約締結までの所要日数、紙契約との比率など)を設定し、定期的にモニタリングを行いましょう。

改善点が見つかれば、
Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)
のPDCAサイクルを回して、運用品質を高めていくことが重要です。
定着と改善の両立が契約書DX成功のポイントです。

まとめ

契約書DXは、単なる電子契約の導入ではなく、契約業務全体の抜本的な改革を意味します。業務効率の向上・コスト削減・リスク管理の強化といった多くのメリットがあり、法務機能の戦略的活用にもつながります。

現状分析から目的設定・システム導入・社内展開までを段階的に進めることで、企業全体の競争力を高められます。これからの経営においては、契約書DXを経営課題の一つとして捉え、着実に推進することが重要です。

よくある質問

契約DXとは何?

契約DXとは、契約業務全体(契約書の作成・レビュー・締結・管理・更新まで)をデジタル技術によって最適化し、効率化と高度化を図る取り組みです。電子契約の導入にとどまらず、業務フロー全体の再設計や自動化、契約情報のデータベース化なども含まれます。これにより、業務スピードの向上・コスト削減・コンプライアンス強化などの多くのメリットが得られ、企業の競争力向上にも寄与します。

契約書のデジタル化とは何?

契約書のデジタル化とは、紙で作成・保管していた契約書類を、PDFやWordファイルなどの電子データで管理・運用することを指します。これには、電子署名の活用による締結の電子化や、クラウド上での契約書保管・検索・共有も含まれます。デジタル化により、書類の紛失リスクや保管コストが減少し、契約情報へのアクセス性や検索性も大幅に向上します。契約書DXの第一歩として、多くの企業が取り組んでいる領域です。

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