契約履歴データベース化とは?種類や特徴、システム導入のメリットを解説

紙の契約書管理は、膨大な時間と労力を費やし、更新漏れや紛失というリスクを常に抱えています。それでは、企業の重要資産である契約情報を、より効率的かつ安全に管理するにはどうすればいいのでしょうか。
この記事では、契約履歴のデータベース化がもたらすメリットや、導入すべきシステムの選び方、AI技術の活用法などについて解説していきます。契約書管理システムの導入を検討している法務担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
契約履歴データベース化とは何?
「契約履歴のデータベース化」とは、紙で保管されていた契約書や、それに関連するあらゆる情報をデジタルデータとして整理・保存し、一元的に管理することです。
契約履歴データベース化は、多くの企業で法務部門が抱えている以下のような契約管理の課題の解消につながります。
- 膨大な紙の契約書の中から目的のものを探し出すのに多大な時間と労力がかかる
- 更新期限の見落としや失念により、意図せず契約が自動更新されたり、重要な取引機会を逃したりするリスクがある
- 部門をまたいだ情報共有が必要であっても、担当者が不在ですぐにアクセスできない
- 紙の契約書は常に紛失や盗難のリスクにさらされており、災害時にはデータ消失のリスクもある
契約履歴のデジタル化が必要な理由
紙ベースで契約書を管理している場合、多くの企業は非効率でリスクの高い運用を余儀なくされています。
まず、契約書をキャビネットや倉庫で保管すると、物理的なスペースが必要です。また、書類を探すだけでも多くの時間を要します。
さらに、複数の担当者が同じ契約書にアクセスする場合、原本の所在確認やコピー作成の手間が発生し、情報共有がスムーズに行えません。
そのため、契約更新の機会を逃したり、意図しない自動更新を許してしまったりといったトラブルにつながるリスクもあります。
これらの紙ベースで発生する課題は、契約履歴をデジタル化しデータベースとして管理することで大幅に改善できます。デジタル化によって、契約情報へのアクセス性が向上し、検索の手間が削減されるほか、重要な期限がシステムによって通知されるため、人為的なミスを防ぐことが可能になります。
契約履歴データベースの基本構成要素
契約履歴データベースに最低限含めるべき基本項目とその重要性は、以下のとおりです。
- 契約の名称、契約締結日、契約番号、契約相手先の情報(企業名、担当者名)などの契約基本情報
契約書を特定するための基本情報を整理することは検索の起点となります。 - 契約開始日、終了日、自動更新の有無、更新通知期限
契約期間と更新情報を正確に管理することで、契約更新漏れといった重要なリスクを回避できます。 - 電子ファイル化された契約書原本
契約書データにより、いつでも契約内容全体を確認できます。 - 契約内容に関する責任者や、実務担当者の氏名や部署名
社内における契約情報の問い合わせ先を明確にし、スムーズな情報連携が可能になります。 - 契約書の中から特に重要な項目(支払い条件、解約条件、準拠法など)の要約データ
重要条項サマリーをデータ化しておくことで、契約書全体を読まずとも、主要な条件を把握できるようになります。 - 契約が現在「有効」「終了」「更新中」といった契約ステータス
契約がどの段階にあるかを示す情報をデータ化しておくことで、契約ライフサイクル全体を俯瞰的に管理できます。
契約履歴をデータベース化するメリット
契約履歴をデータベース化することは、企業の法務部門にとって計り知れないメリットをもたらします。従来の紙ベースの管理では避けられなかった多くの課題が解決され、業務の効率化とリスク管理の強化が実現するからです。
契約履歴のデータベース化の主なメリットは、以下のとおりです。
- 契約更新漏れのリスク低減
- 契約情報の一元管理による業務効率化
- 瞬時に必要な契約情報を検索できる利便性
契約更新漏れのリスク低減
重要な取引先との契約を更新し忘れることは、企業にとって、ビジネス機会の損失や法的な紛争に発展するリスクがあります。また、自動更新条項のある契約の場合、意図しないまま契約が延長され、不要なコストが発生するリスクもあります。
契約履歴をデータベース化することで、これらのリスクを大幅に低減可能です。
システムに契約の開始日・終了日・更新通知期限などを登録することで、期限が近づくと自動的に担当者へアラートが送信される仕組みを構築できます。これにより、人為的なミスによる更新漏れを防ぎ、適切なタイミングで契約内容の見直しや更新交渉を行うことが可能になります。
契約情報の一元管理による業務効率化
紙ベースでの契約情報管理では、契約書が各部署や担当者の手元に散在し、必要な情報を探すだけでも膨大な時間と労力がかかることもあります。また、契約内容の確認や承認プロセスにおいても、物理的な書類の受け渡しが必要となり、業務の停滞を招く原因となります。
しかし、データベース化すれば、すべての契約情報がデジタル形式で一箇所に集約されるため、例えば、営業部門が顧客との契約条件を即座に確認したり、法務部門が過去の類似契約を参照して新規契約のドラフト作成を効率化したりすることが可能です。
結果として、契約業務にかかる工数が削減され、従業員はより戦略的で付加価値の高い業務に集中できるようになります。
瞬時に必要な契約情報を検索できる利便性
紙ベースの管理では、特定の契約書を探し出すために、ファイルキャビネットや膨大な書類の中から手作業で探し出す必要があります。
契約書をデータベース化しておけば、キーワード・契約相手名・契約締結日・契約の種類など、多様な条件で検索することが可能です。
これにより、顧客からの問い合わせに迅速に対応できるようになります。また、訴訟対応や監査対応時にも必要な証拠を迅速に提示することも可能です。さらに、過去の契約データを活用して、類似案件の契約条件を比較検討したり、リスクの高い条項を事前に把握したりすることも可能になり、業務の生産性と品質が飛躍的に向上するでしょう。
契約履歴のデータベース化を行う際に活用したい契約管理システムの種類
契約履歴をデータベース化する際に活用する契約管理システムには大きく分けて、オンプレミス型とクラウド型の2種類があります。それぞれの特徴は、以下のとおりです。
1.オンプレミス型の特徴
- 導入コストが高額
- 自社で運用・保守を実施する必要がある
- カスタマイズ性は高い
- セキュリティは自社で管理・強化が可能
2.クラウド型の特徴
- 導入コストは安価
- 運用・保守はサービス提供事業者が行う
- カスタマイズ性が低い
- セキュリティはサービス提供事業者に依存
オンプレミス型とクラウド型の特徴比較
オンプレミス型は、大規模企業や、特に高度なセキュリティ要件を持つ企業、あるいは既存のITインフラとの連携を重視し、システムを自由にカスタマイズしたい場合に適しています。
これに対して、クラウド型は、初期費用を抑えたい中小企業や、IT専任者が少ない企業、迅速な導入を求める企業に適しています。
どちらを選ぶかは、企業の規模・予算・IT体制・セキュリティポリシーによって大きく異なります。メリット・デメリットを評価するためには、以下のようなそれぞれの特徴を適切に理解しておく必要があります。
専用契約管理システムの機能と選び方
専用契約管理システムの主要な機能は以下のとおりです。
- 契約書をPDF、Word、Excelなどの形式で登録・管理する機能
- 多様な条件・キーワードで契約情報を検索できる機能
- 契約の有効期限、更新状況、支払い状況など契約状況を一覧で確認できるダッシュボード機能
- 契約期限が近づいた際や、更新手続きが必要な場合に自動的に通知するアラート機能
- ユーザーごとに契約情報へのアクセス権限を細かく設定できる機能
また、専用契約管理システムを選定する際のチェックポイントは、以下のとおりです。
- 自社の業務内容との適合性
- 電子契約機能の有無・連携性
- セキュリティ対策
- サポート体制
契約履歴データベース選定時のポイント
契約履歴データベースを導入する際には、自社の事業特性や組織文化に合わせたシステムを選ぶことが重要です。ここでは、選定時に特に重要となる3つのポイントを紹介します。
- 業種・業態に合わせた必要機能の見極め方
- セキュリティ対策と権限管理の考え方
- 導入後のサポート体制とコスト
業種・業態に合わせた必要機能の見極め方
契約履歴データベースを導入する際、事業内容によって求められる機能は異なります。
- 製造業
見積もり査定機能やサプライヤー管理機能が重要です。多数のサプライヤーとの間で交わされる多様な契約を効率的に管理し、調達プロセス全体の透明性を高める機能が求められます。 - サービス業(IT、コンサルティングなど)
プロジェクト管理機能や工数管理機能が不可欠です。プロジェクト単位での契約内容や進捗状況を可視化し、適切なリソース配分や収益性の分析に役立てることが重要です。 - 不動産業
物件管理機能や家賃管理機能が特に役立ちます。物件情報と契約情報を紐付けて管理することで、契約更新や家賃管理をスムーズに行えます。
セキュリティ対策と権限管理の考え方
契約データの機密性を守るためのセキュリティ対策として、通信経路や保存データの暗号化が挙げられます。また、「誰が・いつ・どの契約書に・どのような操作をしたか」を記録する監査ログ機能を活用すれば、不正行為を抑止し、万一の際に原因究明に役立ちます。
必要な人にだけ必要な情報へのアクセスを許可する権原管理の設計も重要です。単に「閲覧」と「編集」の権限を分けるだけでなく、部署や役職、個々の契約書ごとに細かく権限を設定しましょう。
AI技術を活用した契約書管理
AI技術を活用することで、従来の契約管理システムが情報の整理や検索を効率化する一方で、さらに、契約内容そのものの分析やリスク評価を自動化することができます。
AI技術が契約書管理にもたらす主要な活用領域は、以下のとおりです。
- 重要条項の自動抽出
- リスク条項の自動検知
AI契約書分析による重要条項の自動抽出
AI技術を活用した契約書分析を行えば、契約書から重要条項を自動で抽出することができます。これは、アップロードされた契約書のテキストデータをAIが解析し、契約書のタイトル、当事者名、契約締結日、契約開始日、契約終了日、自動更新の有無、解約通知期限といった特定の項目を識別し、自動で契約台帳に反映する仕組みです。
AI契約書分析により、人手による入力作業の削減とヒューマンエラーを防止し、法務部門がより本質的な業務に集中できるようになります。
リスク条項の自動検知機能とその活用法
AI技術を活用することで、契約書に潜むリスク条項を自動で検知することができます。
AIが契約書内の条文を詳細に分析し、法的に問題がある可能性のある箇所、あるいは企業にとって不利になり得る条項を特定し、アラートとして提示してくれます。
AIが初期段階でリスク条項を洗い出すことで、担当者はより迅速かつ網羅的に契約書をレビューできるようになり、適切な是正措置を促すことが可能です。
まとめ
契約履歴をデータベース化することにより、従来の紙ベースの管理が抱える非効率性やリスクを回避し、契約情報の一元管理や、検索性の向上、契約更新漏れの防止につながるなどのメリットを得られます。
また、AI技術を活用した契約書分析やリスク検知機能は、法務部門の専門的な業務を効率化し、より戦略的な役割を担うことを可能にします。契約管理システムを導入する際は、自社の業種や課題を明確にした上で、適切なサービスを選定してください。
よくある質問
契約書のデータベース化とは?
契約書のデータベース化とは、紙で保管されている契約書や、それに付随するさまざまな情報をデジタル形式に変換し、一元的に管理することです。
具体的には、契約書の原本(PDFなど)や、契約当事者、契約締結日、更新期限などの情報をシステムに登録し、必要なときにいつでも検索・参照できる状態にすることを指します。
データベース化のメリットは?
契約書のデータベース化には、以下のようなメリットがあります。
- 契約更新漏れのリスクが低減する
- 契約情報が一元管理により、情報共有や承認プロセスなどの業務が効率化する
- キーワードや契約日で必要な契約書を瞬時に検索できるため、顧客対応や監査対応のスピードが格段に上がる

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