リーガルテックサービスとは?種類とメリット・おすすめ活用法を徹底解説

近年、法務部門のリソース確保やDX推進により、リーガルテックサービスの導入が企業法務のトレンドになっています。
では、リーガルテックとは、どのようなもので、どのようなサービスなのでしょうか。
この記事では、リーガルテック主要サービスの種類から最新トレンド、導入のメリット・デメリットなどについて、詳しく解説していきます。自社の課題解決とビジネス成長のためにリーガルテックの導入を検討されている法務担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
リーガルテックとは
リーガルテックとは、「Legal(法的)」と「Technology(技術)」を組み合わせた概念で、IT技術を用いて法律業務を効率化・高度化するサービスや製品のことを指します。
2018年におけるリーガルテックの市場規模は39億円程度でしたが、2025年には395億円にまで拡大すると予測されており、市場の急成長が伺えます。
急成長の背景にあるのは、法務部門の人材不足、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進による業務効率化のニーズ、そしてコロナ禍を契機とした働き方の多様化などです。
リーガルテックにおける最新トレンド
リーガルテックは、AIやブロックチェーン(データの改ざんが困難な安全性の高い技術)といった最新技術を活用して、目覚ましい発展を遂げています。
まず、AI活用によって、契約書のレビューにおいて、膨大な契約書の中から条項の不備やリスクを自動で検出し、法務担当者の負担の大幅な軽減が可能です。
また、ブロックチェーン技術の活用によって、契約締結のプロセスを透明化し、契約書改ざんリスクを低減させることができ、電子契約の効率化やコスト削減を実現します。なお、ブロックチェーンとは、取引データを「ブロック」という単位でまとめ、それをチェーンのように連結させることで、データの改ざんを防ぎ、高い透明性と安全性を実現する分散型台帳技術のことです。
さらに、契約書の作成から締結、管理までを一元的に行えるプラットフォーム型サービスの台頭により、企業法務のプロセス全体を効率化・最適化する動きが加速しています。
リーガルテックサービスの種類とは
主要なリーガルテックサービスの種類は、以下のとおりです。
- 案件受付管理
法律相談や契約書作成依頼の受付から進捗管理までを一元化するサービス - 契約書作成・レビュー
AIを活用し、契約書のひな形作成やリスクチェックを自動化するサービス - 電子契約
契約書の締結や保管をオンラインで完結させるサービス - 締結済契約管理・CLM
締結後の契約書を効率的に管理し、契約更新などを自動で通知するサービス - リサーチ
判例・法令・法律文献などの情報をデジタル化し、効率的な調査を支援するサービス
案件受付管理
法務部門が日々直面する課題の1つに、各部門からの法律相談や契約書作成依頼が多岐にわたり、進捗状況を把握しきれない点があります。
「案件受付管理サービス」は、依頼の一元管理を可能にし、業務の目詰まりを解消します。
社内からの依頼を専用の受付フォームで受け付け、案件ごとに担当者を割り振り、進捗状況を可視化します。
これにより、誰がどの案件に対応しているか、どこまで進んでいるかの把握が可能です。また、過去の案件はデータとして蓄積され、類似案件の対応を効率化できるようになります。
契約書作成・レビュー
AIを活用した契約書作成・レビューサービスは、過去のデータや法律知識を基に、契約書のひな形を自動で生成したり、アップロードされた契約書のリスク条項を検出して修正案や解説を提示したりする仕組みです。
経験豊富な担当者が数時間かけて条文をチェックしなくても、AIツールを使えば数分でリスク箇所の特定が可能になります。
AIが定型的なチェックを代行することで、担当者はより専門的な判断や、ビジネス部門との交渉といった戦略的な業務に集中することが可能です。また、AIはヒューマンエラーのリスクを低減し、常に一定レベルのレビューを提供してくれます。
電子契約
電子契約サービスは、契約書の締結をオンライン上で完結させることです。クラウド上で契約書に電子署名を行うことで、紙の契約書に押印するプロセスが不要になります。
電子契約であっても、電子署名法や民法改正によって法的な有効性が確立されています。
電子署名法は、電子署名が行われた電子文書の真正な成立について定める法律です。
また、2020年(令和2年)の民法改正では、押印や書面がなくても契約が成立することが明記されました。これにより、法的安全性が担保された状態で電子契約を導入できます。
電子契約サービスの導入により、契約締結までのリードタイムが大幅に短縮され、ビジネスのスピードが向上します。また、契約書が電子データとしてクラウド上に保管されるため、紛失リスクを低減し、いつでもどこでも閲覧・管理が可能です。
締結済契約管理・CLM
「CLM(Contract Lifecycle Management)」とは、「契約ライフサイクル管理」のことで、契約書の締結前から、締結後の更新・破棄に至るまでの契約業務プロセス全体を管理・最適化することです。
締結済契約管理サービスは、締結後の契約書管理業務に特化しています。
契約書をアップロードすると、AIが契約開始日・満了日・自動更新の有無といった重要情報を自動で抽出し、データベース化します。また、契約満了日が近づくとシステムが自動で通知するため、更新手続きの漏れを防ぐことができます。
これにより、契約管理の属人化を防ぎ、コンプライアンスリスクを低減するとともに、契約更新や再交渉を戦略的に行うことが可能になります。
リサーチ
法律情報のデジタル検索サービスは、判例・法令・学説・専門書籍などの法律情報をデジタルデータベースとして提供するサービスです。紙媒体での調査は、膨大な書籍の中から関連情報を探し出す手間と時間がかかり、リモートワーク環境ではアクセスも困難でした。
しかし、デジタル化されたデータベースでは、キーワード検索や条件検索によって必要な情報を瞬時に見つけ出すことができます。
法律情報のデジタル検索サービスの活用により、法務担当者や弁護士は調査にかかる時間を大幅に短縮し、より高度な法的分析や戦略立案に時間を割くことが可能です。また、常に最新の法令改正情報が反映されるため、情報の正確性を担保することもできます。
リーガルテックサービスを選ぶ際のポイント
リーガルテックサービスの導入を成功させるためには、自社のニーズに合った適切なサービスを選定することが不可欠です。選定時に確認すべきポイントは以下のとおりです。
- 目的とニーズを明確にする
まず、サービス導入によってどのような課題を解決したいのか、目的を具体的に設定しましょう。
例えば、「契約書のレビュー時間を短縮したい」や「契約書の管理を効率化したい」など、具体的な課題を洗い出すことが重要です。求める機能が複数ある場合は、それらを包括的に提供できるサービスかを確認することで、導入後のミスマッチを防げます。 - 機能と特徴を比較する
リーガルテックサービスは、基本的な機能は共通していても、サービスごとに独自の強みを持っています。
例えば、電子契約サービスであれば、電子署名に加え、多言語対応や紙の契約書管理機能の有無など、付加機能を確認する必要があるでしょう。自社の業務フローに沿った機能が搭載されているか、複数のサービスを比較検討することが重要です。 - コストパフォーマンス
サービスの導入にかかる初期費用や月額費用だけでなく、どれだけの人件費や業務工数を削減できるかを考慮し、全体的なコストパフォーマンスを評価しましょう。
予算内で最大の効果を得られるサービスを見つけるために、費用対効果の観点から複数のサービスを比較検討することも重要です。 - サポート体制の有無
法務関連の文書は、わずかなミスが大きなリスクにつながる可能性があります。
特に、社内に法務専門の担当者がいない場合、トラブル発生時に弁護士などの専門家のサポートが受けられるサービスは安心でしょう。イレギュラーな事案が発生した際に迅速に対応してくれるか、充実したサポート体制が整っているかを確認しましょう。 - ユーザーレビューと評価
実際にサービスを導入した企業や担当者の声は、サービスの使い勝手や効果を知る上で非常に有益です。
ITサービスの比較サイトや導入事例などを参考に、類似企業のレビューや評価を確認することで、導入後のイメージを具体的に描きましょう。
リーガルテックサービスを導入する3つのメリット
リーガルテックサービスの導入は、企業法務に多大な恩恵をもたらします。主なメリットは以下の3点です。
- 業務効率化と生産性向上
契約書レビューや管理業務を自動化することで、法務部門の作業時間を大幅に短縮し、より戦略的な業務に注力できます。 - コスト削減効果
印紙代や郵送費などの直接的な経費削減に加え、人件費削減や保管コストの削減も実現します。 - リスク管理の強化
AIが契約書のリスク条項を自動で検出するため、ヒューマンエラーによる見落としを防ぎ、コンプライアンス遵守を徹底できます。
業務効率化と生産性向上
AI契約レビューサービスを導入すれば、弁護士が数時間かけて行わなければならない契約書のチェックが、わずか数分で完了するようになります。また、電子契約サービスを利用すれば、契約書の郵送・押印・返送といった一連のプロセスが不要となり、契約締結までのリードタイムを大幅に短縮できます。
これらの効率化によって、法務担当者は定型的な作業から解放され、M&Aや新規事業における法的課題の検討や企業ガバナンスの強化など、より高度で専門的な業務に集中することが可能になります。
リーガルテックサービスの導入によって、法務部門全体の生産性が向上し、企業の成長に貢献する戦略的なサポートを行うことが可能になるでしょう。
コスト削減効果
電子契約サービスを導入することで、紙の契約書が不要になり、印紙税(収入印紙代)・郵送費・印刷費といった直接的な経費を削減できます。さらに、契約書の物理的な保管スペースも不要になるため、倉庫費用などの間接的なコストも削減可能です。
長期的な視点で見れば、業務効率化によって残業時間が減り、人件費の削減にもつながります。初期投資は必要ですが、これらの削減効果を合わせると、導入から数年で投資額を回収でき、高い投資対効果が期待できるでしょう。
特に、契約件数が多い企業ほど、リーガルテックの導入によるコスト削減効果として数%から数10%程度の削減が見込めます。
リスク管理の強化
AI契約レビューサービスは、契約書に潜在するリスク条項や不備を自動で検出し、法務担当者が手作業で見落としてしまう可能性を最小限に抑えます。これにより、締結前に法的リスクを早期に発見し、適切な対応をとることが可能になります。
また、CLM(契約ライフサイクル管理)サービスは、契約の更新時期を自動で通知するため、更新手続きの失念による予期せぬ契約満了や自動更新を防ぎます。このような機能は、コンプライアンス違反のリスクを低減し、企業運営の健全性を高めます。
リーガルテックサービスを導入する2つのデメリット
リーガルテックサービスの導入は多くのメリットをもたらしますが、一方で考慮すべき課題も存在します。主なデメリットは以下の2点です。
- 取引先との理解課題
電子契約など、取引先との連携が必要なサービスでは、相手方のITリテラシーや導入状況によってスムーズな移行が難しい場合があります。 - セキュリティとデータ保護の問題
クラウドサービスを利用する特性上、システム障害やサイバー攻撃による情報漏洩のリスクがゼロではありません。
取引先との理解課題
リーガルテック、特に電子契約サービスを導入する際、最も障壁となるのが取引先の理解不足です。
すべての取引先がIT技術に精通しているわけではなく、電子契約への対応が難しい、あるいは社内規定で認められていないケースもあります。せっかくサービスを導入しても、取引先の協力が得られなければ、紙の契約書と電子契約が混在し、かえって業務が煩雑になる可能性があるのです。
そのため、導入前に取引先の電子契約に対する意向や対応状況を丁寧にヒアリングすることが重要です。
迅速な締結やコスト削減など電子契約のメリットを具体的に説明し、導入への理解を求めたり、一部の契約から段階的に電子契約を導入したりするなど、コミュニケーションを取りながら進めましょう。
セキュリティとデータ保護の問題
リーガルテックサービスはクラウド上で提供されることが多く、システム障害やサイバー攻撃によるデータ漏洩のリスクは常に考慮すべき重要なデメリットです。万が一、企業の機密情報や個人情報が外部に流出した場合の被害は甚大です。
そのため、サービス選定時に提供企業のセキュリティ対策を徹底的に確認することが不可欠です。
情報セキュリティ認証の取得状況・データの暗号化・アクセス制御・多要素認証といったセキュリティ対策が徹底していると安心でしょう。また、万が一のシステム障害に備え、データをバックアップする体制も不可欠です。
まとめ
リーガルテックは、法務業務の効率化、コスト削減、そしてリスク管理の強化に大きく貢献します。
一方で、取引先の理解やセキュリティ対策など、導入前に検討すべき課題も存在します。
これらのポイントを十分に理解した上で、自社の目的やニーズに合ったサービスを選定することが、リーガルテック導入を成功させる鍵となります。

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