【例文あり】契約書のメール取り交わし方法と注意点を徹底解説

契約書の取り交わしにメールを活用するのは、現代ビジネスでは一般的です。しかし、「本当に法的に有効?」「セキュリティ対策は?」といった不安を抱える方も少なくありません。
この記事では、メールで契約書を取り交わす具体的な方法から法的な注意点、トラブルを防ぐためのポイントまでを解説します。
【例文あり】契約書のメール取り交わし方法
契約書をメールで取り交わす場合は、以下の流れで行います。
- セキュリティ対策を施し、契約書データをメールに添付する
- 契約書の送付や返信希望期限などを本文に記載してメールを送信する
- メールを受領した場合は、受領確認メールを送信する
- 内容を確認し、問題がなければ契約締結に進む
メールでの合意であっても、民法上は有効な契約が成立します。
契約書をメールで送る際の基本マナー
契約書をメールで送る際、まず件名は
【株式会社〇〇】△△契約書案のご送付(貴社名)
のように、「送り元」「内容」「送信先(対象)」が明確にわかるように記載し、20文字程度に収めると良いでしょう。あまり長すぎると一覧表示の際に件名の一部が見えなくなってしまうためです。
本文はほかのビジネスメールと同様に「5W1H」を意識し、誰から誰にどのような要件があるのか、ということを明確にわかりやすく伝えることが重要です。
5W1Hとは、以下のような内容を指します。
- Who(誰が):差出人(自社名、氏名)
- When(いつ):送付日、相手への確認依頼の期限など
- Where(どこで):特段記載は不要だが、必要に応じて確認場所など
- What(何を):送付する契約書の名称や内容
- Why(なぜ):契約書送付の目的(例:協議の結果、契約締結のため)
- How(どのように):どのような対応をしてほしいのか
メール本文の構成は基本的に、
宛名・挨拶・送付目的・添付書類の説明・確認事項・返信依頼・締めの言葉・署名
という順で作成します。
契約書送付メールの例文テンプレート
ここでは3つのケースにわけて契約書を送付する際のメールテンプレートを紹介します。
初回送付時は契約の背景や内容確認の依頼、修正依頼時は変更点の明確化、最終確認時は行動の促しを意識した内容にすることが大切です。
1.初回送付時
件名:【株式会社〇〇】△△契約書案のご送付
株式会社□□
〇〇部 □□様
いつもお世話になっております。
株式会社〇〇の△△です。
先日は、〇〇に関するお打ち合わせにお時間をいただき、誠にありがとうございました。
つきましては、お打ち合わせ内容に基づき、「△△契約書」の案を作成いたしましたので、添付にてお送りいたします。
ご多忙中恐縮ではございますが、内容をご確認いただき、ご意見やご不明な点がございましたらご連絡ください。
何卒よろしくお願い申し上げます。
2.修正依頼時
件名:【株式会社〇〇】△△契約書案(修正版)のご送付
株式会社□□
〇〇部 □□様
いつもお世話になっております。
株式会社〇〇の△△です。
先日は△△契約書案にご指摘いただき、誠にありがとうございました。
ご指摘いただいた点について修正いたしましたので、修正版の契約書を添付にてお送りいたします。
以下の点を修正しております。
・第〇条(〇〇に関する条項)
・別紙〇(〇〇に関する内容)
お忙しいところ大変恐縮ですが、再度ご確認いただけますと幸いです。
引き続き何卒よろしくお願い申し上げます。
3.最終確認時
件名:【株式会社〇〇】△△契約書(最終版)ご署名・ご捺印のお願い
株式会社□□
〇〇部 □□様
いつもお世話になっております。
株式会社〇〇の△△です。
先般お打ち合わせいたしました△△契約書につきまして、
内容が確定いたしましたので最終版を添付にてお送りいたします。
お手数をおかけいたしますが、内容をご確認いただき、
問題ございませんでしたらご署名・ご捺印いただき、
〇月〇日までにご返送いただけますようお願い申し上げます。
お手数をおかけしますが何卒よろしくお願いいたします。
契約書添付時のセキュリティ対策
情報漏洩のリスクを最小限に抑えるために、メールを添付する際には厳重なセキュリティ対策が重要です。
まず、パスワード設定(PDF暗号化)は必須です。添付する契約書ファイルをPDF化し、閲覧パスワードを設定します。このパスワードは、別のメールや電話などで先方に伝えるようにしてください。
次に、誤送信防止の徹底が重要です。送信前には宛先のメールアドレスが正しいか、送信相手が意図した人物であるかを必ず複数回確認しましょう。
ほかにも送付方法として、パスワードで保護した圧縮したフォルダ(ZIPファイルなど)を送付する方法、Google DriveやDropboxなどのクラウドストレージサービスでフォルダやファイルにアクセス権限を付与して共有する方法などもあるため、自社や先方のルールなど状況に応じて適切な方法を選択しましょう。
契約書をメールで取り交わす際の法的注意点
メール上での契約締結は、民法上の要件を満たせば法的に有効な契約となります。
しかし、メールでの契約締結は紙の契約やりとりと比べて、改ざんのリスクがあるほか、「自分が送ったメールではない」「最終的な内容には合意してない」といったトラブルに発展するリスクもあります。
そのため、契約成立時を明確にし、電子署名を活用したり、すべてのやり取りを保存したりして証拠を残しておくことがポイントです
メールでの合意が法的に有効となる条件
民法上、契約は「申込みと承諾」の意思表示が合致したときに成立します。また、特段の定めがない限り、書面の作成など特定の方式を準備する必要がありません)。
第522条
1.契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2.契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。
つまり、「〇〇の条件で契約を締結したい」というメール(申込み)に対し、「その条件で承諾します」という返信メール(承諾)があった場合、原則として契約は成立します。
裁判例においても、メールの内容から当事者間の合意が明確に認められれば、契約の成立が認定されるケースは少なくありません。
トラブルを防止するためにも、契約の当事者双方が記名押印した契約書の原本や電磁的記録を乙が受領した時点で本契約書の内容で契約が成立する、といった条項を明記しておきましょう。メールでの契約の証拠力を高めるには、電子署名の利用が有効です。
トラブルを防ぐための契約書文面の作り方
曖昧な表現を避け、明確な合意内容を記載するには、以下のようなポイントが重要です。
- 会社としての目的意識を持って作成する
- 権利と義務を明確にする
- 解釈上、疑義が生じない用語・表現を用いる
- 記載すべき内容を漏れなく記載する
また、契約書に記載すべき内容と文例は、以下のとおりです。
1.目的条項
契約によって何を達成するかを具体的に記載します。
例:本契約は、甲が乙に対し〇〇サービスを提供し、乙がその対価を支払うことを目的とする
2.権利義務に関する条項
各当事者が何を要求でき、何をすべきかを明確にします。
例:乙は、甲に対し、以下の業務(以下「本件業務」という)を委託し、甲はこれを受託する。(具体的な業務内容を箇条書きで記載)
3.契約期間・終了事由
契約の開始日、終了日、更新の有無、そして解除できる条件を定めます。
例:本契約の有効期間は、〇年〇月〇日から〇年〇月〇日までの満1年間とする。本契約は、期間満了をもって当然に終了し、更新は行わないものとする
4.費用負担
契約締結や履行に伴う費用の負担者を明確にします。
例:印紙代は甲乙折半とする/振込手数料は〇の負担とする
5.法令対応条項
個人情報保護や反社会的勢力排除など、関連法規に基づく条項を盛り込みます。
6.紛争解決手段・合意管轄
トラブル発生時の解決方法や、具体的な管轄裁判所を定めます。
例:東京地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とする
契約書受領後のメール返信方法
契約書をメールで受け取った際は、ビジネスマナーとして迅速に返信することが大切です。
契約書が無事に届いたかどうか相手を不安にさせないために、「受領確認」を遅くとも24時間以内に行いましょう。その後、契約書の内容を精査する「内容確認」の連絡を行ってください。
「受領確認」はあくまで形式的な受け取り報告であり、実質的に契約の中身に踏み込んだ「内容確認」とは異なります。
契約書受領メールの基本構成と例文
契約書を受領した際のメールは、ビジネスマナーに則り以下の基本構成で作成しましょう。
・件名
契約書を受領したことが一目でわかるように簡潔に記載してください。
例:Re: 【株式会社〇〇】△△契約書案送付のご連絡(受領確認)/契約書ご送付の御礼(株式会社〇〇)
・挨拶
相手の会社名、部署名、氏名を正確に記載し、日頃の感謝を伝えます。
例:
株式会社□□
〇〇部 □□様
いつもお世話になっております。
株式会社〇〇の△△です。
・本文
契約書が無事に届いた旨と、感謝の気持ちを表現します。その上で、内容確認に時間を要する旨を伝え、いつ頃までに内容を確認し、返信するかなど今後の流れを提示します。
例:
この度は「△△契約書」をご送付いただき、誠にありがとうございます。
本日、無事に受領いたしました。迅速なご対応に感謝申し上げます。
内容につきましては、現在確認を進めております。
〇月〇日頃までにはあらためてご連絡させていただきますので、今しばらくお待ちいただけますと幸いです。
・締めの言葉
「まずはメールにて受領のご報告とお礼まで」といった言葉で締めくくると丁寧な印象を与えます。
例:何卒よろしくお願い申し上げます。
・署名
会社名、部署名、氏名、連絡先(電話番号、メールアドレス)を必ず記載します。
例:
〇〇株式会社
△△部◇◇課
●● ●●
xxx-xxxx-xxxx
yyy_yyy@yyy.yy
契約内容に不明点がある場合の問い合わせ方
契約書の内容に不明点や修正希望がある場合は、丁寧かつ明確な表現で問い合わせを行い、相手に不快感を与えず、スムーズな合意形成を目指すことが重要です。
まず、件名には
・ご確認のお願い
・【株式会社〇〇】△△契約書案についてのご質問
などと記載してください。
質問内容は、どの条項のどの部分について疑問があるのかを明確に示します。
・第〇条の〇〇について、貴社の意図するところをご教示いただけますでしょうか
修正依頼をする場合は、具体的な修正案とともに提案しましょう。
・第△条を『〇〇』と修正いただきたく存じますが、いかがでしょうか
建設的な交渉を行うためには、単に問題点を指摘するだけでなく、下記のように代替案や妥協案を提示するなど相手の意見を尊重するコミュニケーションを心掛けましょう。
・弊社の認識では、〇〇のほうが実態に合致すると考えておりますが、貴社のご見解はいかがでしょうか
まとめ
メールで契約書の取り交わしをする際には、ビジネスマナーやセキュリティ対策に留意した上で、スムーズな合意形成を行う必要があります。メールでの合意は民法上有効ですが、改ざんリスクや証拠保全のため、PDFへのパスワード設定や電子契約サービスの利用を検討してください。
受領メールは24時間以内の返信を心がけ、内容確認の際は不明点を具体的に問い合わせることが大切です。これらのポイントを押さえ、安全かつ円滑な契約締結を目指しましょう。
よくある質問
契約書をメールで送る方法はありますか?
メールで契約書を送る方法はあります。
具体的には契約書をPDFファイルや圧縮ファイルとしてメール添付することなどにより、契約書をメールで送付することができます。
メールによる契約は法的に有効ですか?
メールで契約を締結することは法的に有効です。
契約の当事者間で「申込みと承諾」があれば、メールによるやり取りであっても、法的に有効な契約となります。

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