契約管理とは?メリットと選び方を徹底解説【効率化のポイント】

LAWGUE編集部
契約管理とは?メリットと選び方を徹底解説【効率化のポイント】
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過去に似たような契約をした覚えがあるけれど、どの取引だったかはっきりしない。場当たり的に契約書チェックをしている。社内の至るところに契約書が散らばっていて、ほしい契約書がすぐに見つからない。更新期限が過ぎていて、慌ててまき直しをした。

そんな経験はありませんでしょうか。

こうした契約のライフサイクルにありがちなトラブルを減らすのが契約管理です。
この記事では、契約管理の重要性を説明した後、どのような契約管理の方法があるかなどに重点を置いて説明します。

契約管理とは?

まず、契約管理とは何かからご説明します。
契約管理というのは法律上の概念ではないですが、一般的には、契約書を含む契約関係の書類を管理・保存し、契約内容も保管する行為のことを指します。

契約の管理を怠った結果、契約書を紛失することになれば重大な権利を失いかねません。また、特に契約の有効期限の管理を怠ることで不利な法的地位になってしまいかねません。
このように、契約書・契約内容を管理することは、自社の権利を守る上で重要な行為です。

契約書管理の仕組みと目的

契約は、契約のライフサイクル(CLM)を理解することが重要です。
契約は、締結前・締結・締結後に分けて考えられます。

締結前:契約書作成→取引の承認→契約審査 ↓ 締結 ↓ 締結後:保管→管理(期限・履行)→更新(あるいは終了)

まず、締結前には、契約書文案の作成作業から始まり、意思決定機関が承認し(会社であれば重要なものは取締役(会)、ある程度重要なものであれば稟議など)、条項が適切かどうか法務がチェックをします。

そして、実際に締結作業に入ります。紙であれば押印、電子であれば電子署名をします。締結後は、契約書を保管すると共に、契約がきちんと履行されているか、期限は守られているかを管理します。
契約には有効期限があることが多く、有効期限が近づいてきたら更新するか終了させるかを決め、管理します。

ライフサイクルを管理することで、締結前は契約に伴うリスクの洗い出しができ、締結後は期限や更新場面でのリスクをコントロールできます。
さらに、契約書を管理することで、過去の同様の契約書にもアクセスしやすくなり、将来の企業活動に活かすことができます。

企業活動における契約管理の役割

逆に、契約管理を怠っていたら、どうなってしまうでしょう。
契約に伴うリスクを洗い出せず、不当な条項を見逃してしまうおそれがあります。そうすると、法務リスクを負うばかりでなく、不要な出費がかさみ財務的にも重しになります。
締結後にも、不要なリスクを負うことになります。期限内に履行されていないことを見過ごし、逆に履行することを怠ることもあり得ます。
ただ、一度締結し遂行されている状況であれば、案外リスクは最初に飲み込めるため、それ以上悪化することはないともいえます。

企業として痛いのは、うまく行っていた契約が切れてしまうことです。利益を見込んでいた取引が突然止まってしまいます。契約を巻き直すことになり、業態によっては不利益を最小限にできるかもしれませんが、設備を動かすような業態であれば一日の停止が大きな損失を生みます。

さらに、契約管理がしっかりしていないと、新しい契約をするたびに一からチェックするコストがかかってしまいます。締結するタイミングを逸することもありますし、他の取引での教訓を盛り込むこともできなくなってしまいます。
このように、契約管理は、企業活動のリスク回避やコスト削減に繋がっています。

契約管理が必要となる主なシーン

それでは、契約管理が必要となる主なシーンをまとめてみましょう。
まずは契約締結前です。新規顧客との取引の際には、過去の同種の契約管理から得られた教訓を契約書の作成に活かし、契約文言の潜在的リスクなどを洗い出して契約審査に活かします。

例えば多様な商品を扱う小売では、各メーカーによって異なる契約書ひな形をチェックしつつ、適時な仕入れのためには迅速な判断が求められます。
このような場合、過去の大量の契約書データにアクセスすることで、そのメーカー特有の条項を洗い出してリスクを飲めるか、条項の変更が必要か瞬時に判断できます。

契約締結後は、まずは履行の期限管理を行います。
例えば不動産業では、多くのテナントと賃貸借契約を締結しており、それぞれ違うテナント料や支払期限を管理する必要があります。未払いがあれば対応し、有効期限が来れば更新するかどうかを判断しなければなりません。

業界によって締結前の管理と締結後の管理のいずれに重要性が置かれるかは変わりますが、契約管理がリスク管理をする上で重要であることには変わりません。

契約管理の重要性

以上のように、契約管理の概要を説明してきました。
ここで、契約管理の重要性を整理してみましょう。

大きく分けて、
①企業の社会的価値を高める視点
②企業の経済的利益を増やす視点
の2点に整理できます。

①社会的価値とは主にコンプライアンスの観点、②経済的利益とは主にコスト削減やリスク軽減の視点です。特に近年、①の要素が強くなってきました。以下、それぞれみていきます。

法令遵守とコンプライアンス強化につながる理由

まず、①企業の社会的価値を高めるという視点です。
近年、特にコンプライアンスの重要性は高まり、取引先を選ぶ上でも相手のコンプライアンスを重視する傾向が強くなっています。
法令遵守という意味で真っ先に出てくるのは管理期限の問題でしょう。重要な契約書は法令で保管期限が定められていますが、契約管理が機能していれば保管期限以前に廃棄してしまうようなミスは防げます。

さらに、よりダイレクトに契約書の管理が問題になる場面は税務調査でしょう。税務調査においては、原則として契約書その他関連する書面の原本をチェックされます。重要な書面を紛失していれば、過剰な納税を強いられるおそれもあります。

このように、契約管理は外部的なチェック(保管期限や税務調査)にとって重要ですが、内部的なチェックにとっても重要です。内部的なチェックは、特に内部統制や監査の場面で重要です。契約管理が適切であれば、その前提となっていた経営判断や内部手続が適正であったかどうかもすぐにチェックが可能です。

業務効率化と人的ミス防止の観点

次に、②企業の経済的利益を増やす視点について説明します。
契約管理によって、新規取引であっても過去の同種取引を参照することができますし、膨大な契約を最小限の人数で管理することも可能になります。
契約審査に時間も人数も割かなくてよいとなれば、コスト削減と共に業務が効率化できます。
契約管理の人数や工数を減らすことができれば、やはりコスト削減にも繋がります。

さらに、リスクの低減にも繋がります。
契約管理をしていないと、いわゆる「法務のベテラン」が契約書をチェックし管理することになります。職人的な管理体制になり、同じようなミスは見抜けず継続的に続いてしまいますし、そのベテランが辞めてしまえば、後任は契約書を探し見つけるところから始めなければなりません。

このように、効率的な契約管理は、属人的な管理からの脱却も意味します。管理がシステム化されれば、管理体制の偏りもなくなり、人的ミスを減らすことになります。人的ミスが減れば、企業にとっても法的・経済的リスクを減らすことに繋がります。

契約管理における課題

従来契約管理は、主に紙ファイルで行う場合とExcelなど表計算ソフトを使う場合がありました。
従来の契約管理には、どのような課題があるでしょうか。

紙媒体であれば、以下のような課題があります。

  • 保管場所が必要
  • 保存管理にコストがかかる
  • 横断的な検索が困難
  • 災害時に失われるリスク
  • 在宅勤務では対応困難

Excelでの管理であれば、以下のような課題があります。

  • 契約書そのものの検索・管理が困難
  • アラートは結局別管理

このような課題を残しておくと、契約管理におけるメリットを享受できなくなります。
これらを、以下それぞれご説明します。

紙媒体での管理における問題点

紙媒体での管理は、通常契約書台帳を作って綴っていくという方法を取ります。
紙媒体は契約書のほか、関連する資料一式を一括して管理できるというメリットもあり、一覧性も確保できます。

ただ、紙媒体は当然ながら場所を取ります。場所を取るのであれば、例えば倉庫を借りるなどのコストがかかります。自社で管理するのであれば、温度や湿度の管理をする必要も出てきます。
さらに、紙媒体最大の弱点として、契約書間の横断的な検索が困難です。例えばある特定の条項のみをピックアップしようとしても、紙では検索できず、全て書き出す必要があります。

以上が古典的な紙媒体での問題でしたが、近年ではさらに問題点が増えまた深刻化しています。
水害を中心にした自然災害のリスクが高まっています。特に自社で紙媒体での管理を行っていると、自然災害により水没・破損・消失の危険があります。
新型コロナウイルス後、在宅勤務が増えました。紙媒体での管理の場合、通常は契約書を家に持って帰ってはいけない決まりを作っている会社が多いでしょう。つまり、在宅勤務であれば契約書の束にアクセスすることができず、迅速な対応が困難になります。

Excel管理の限界と陥りやすい失敗

紙での管理と比べると、Excelの管理によって改善されることも多いです。一番のメリットは横断検索でしょう。契約内容をExcelで管理し、検索機能を使えば、同様の条項をすぐに見つけることができます。

ただ、逆に言えば「契約書からピックアップした要素のうちExcelに入力した情報」にしか検索をかけることができません。Excelへの情報の入力が不十分だったり間違いがあったりした場合には、検索機能が十分に働かなくなってしまいます。
これを防ぐためには入力のダブルチェックが重要になりますが、そうすると結局コストがかかってしまいます。

さらに、Excelでヒットしたものをたよりに、最終的には基の契約書に当たる必要があります。つまり、結局は紙での管理を併存させる必要があり、紙媒体でのデメリット(管理コスト)がそのまま妥当してしまいます。さらには、Excel入力を行った後、誤って契約書原本を破棄してしまう、契約書とその他の書類の一括管理が疎かになるなどの人的ミスが多く起こります。これを防ぐには管理規程を作成することが重要となります。

また、Excel管理の最大の問題点として、期限が把握しにくいというものがあります。つまり、Excelには期限の一覧を作ることはできますが、アラートと連動するにはExcelの機能だけでは難しいです。そうすると、各種期限(履行期限・有効期限など)はアラート機能のある別ソフトでの管理にするか、期限の管理をルール化しておく必要が出てきます。

契約管理システム導入でどう変わる?

そこで登場するのが、契約管理システムです。
契約管理システムを導入することで、Excel管理のデメリットをカバーし、コスト削減に繋がります。

主な業務 フロー システム導入前(Excel) システム導入後 契約書の作成 同種条項をExcelで検索し、基の契約書やその他書類に当たる 入力情報にミスがあると検索 できない 契約書のデータを直接検索でき るため、基の紙の契約書に当た る必要がない 取引の承認 通常の稟議手続 システム内に稟議機能がある場 合がある 契約審査 基の契約書に当たる必要があり、入力情報にミスがあると検索できない 契約書データを直接検索できる 保管 紙媒体を保管する必要がある場合がある 電子契約と組み合わせれば紙媒 体を保管する手間がなくなる 期限管理 アラート機能がないので、アラート機能のある別ソフトを使うか人的チェックが必要 アラート機能を使えば、常時チ ェックする必要がなくなる 更新 別ソフトか人的チェックが必要 アラートの設定により、更新時 期を見逃さない

契約書作成から保管までのワークフロー効率化

以上まとめたものをそれぞれ説明していきます。
まず、ワークフローを効率化できます。
契約書作成段階では、過去の契約書そのものを直接検索できるようになるため、Excelで検索→基の契約書に当たるというフローが、契約書データを検索というフローに短縮できます。

さらに、承認手続においても、通常の稟議手続(多くは紙で行っていた)も、システム上で承認フローを作っておけば、簡易迅速化に繋がります。
上がってきた契約書の審査段階においても、同じように過去の基の契約書に当たる必要がないため、工程を削減できます。
過去の契約書の蓄積もスムーズですから、頻度の高い契約類型では、社内独自のフォーマットを作ることも容易になってきます。

システム化の最も強いところは、締結後のコスト削減です。
まず、保管について、電子契約との相性が良いので、電子契約書そのものをシステムに取り込む、あるいはアクセスできるようになります。

そうすると、保管にかかっていた物理的なコストをカットできます。
さらに、アラート設定を使うことで、履行期限や更新期限を適時に把握することができます。人的な巡回作業がなくなることで、コスト削減と見逃し防止に繋がります(後ほど詳しく述べます)。

アクセス権限管理によるセキュリティ強化

さらに、システム化によってセキュリティが強化される点についても説明します。
紙媒体であれば、契約書台帳を見る、持ち出すといったアクションそれぞれに、社内規程に基づき承認などの手続を踏んでいる企業も多いでしょう。

ただ、実際に無断で持ち出された場合には、記録が残らないので追跡に苦労します。故意に持ち出すだけでなく、承認手続がルーズになっていてその結果紛失に繋がることになります。
契約管理システムでは、通常、誰がどの契約書にアクセスできるかを設定し管理します(いわゆるアクセス権限管理)。これにより、想定されていない者が契約書にアクセスすることを防止できます。

さらに、通常は証跡管理機能を付けています。証跡とは、ここでは従業員の行動履歴を差し、要は誰がいつ何の契約書にアクセスしたかというアクセスログなどの収集・保存を意味します。
これにより、不正が行われた場合に追跡することが可能になり、結果セキュリティが強化されます。契約の相手方や社会からみれば、安心して契約できる企業とみなされることになり、コンプライアンスを高めることにも繋がります。

自動リマインド機能で更新忘れを防止

契約管理システムの肝は、フォーマット化・検索機能とアラート機能・自動リマインド機能です。
前者は、膨大な契約書を検索対象とし、要点が詰まった独自のフォーマットを作りやすくなるという利点があります。

後者は、履行期限や更新期限など、契約書において重要な期限になる、あるいは期限が近付くと自動でリマインドが出るようにしておけば、見逃しが防げます。
紙であれば担当者が定期的に契約書を巡回したり手作業で表にしておいたりなど、どうしても人的なプロセスが加わりミスも出てしまいますが、自動化することでコストもミスも減らせます。

契約管理システムの選び方とは?

ただ、契約管理システムは複数あり、どれを選んだらいいか悩まれると思います。

他の社内システムや設備などと同じような考え方になりますが、
①まずは業務に合った機能のある契約管理システムを選ぶ
②その上で、コスト(導入コストとランニングコスト)とのバランスを考えて絞り込むのが通常の選定プロセスでしょう。

以下、それぞれ説明します。

自社の契約業務に合わせた契約管理システム選定のポイント

まずは、自社の契約業務に合わせた契約管理システム選定のポイントをご説明します。

  • セキュリティレベルをどこに設定するか
    業態によって、取引先が官公庁だったり、扱う情報に個人情報が多く含まれていたりすることがあります。どの業態もセキュリティはもちろん重要なのですが、取引先や扱う情報によって要求されるセキュリティレベルは異なります。
    まずは自社の業態からみて、セキュリティを重視すべきかどうかを検討してみてください。
  • 従来の管理をどうしていたか(従来のシステムとの接続)
    従来紙が多く、それらと接続したいのであれば、紙のスキャン精度が高いもの、紙のものも一元管理しやすいものを選ぶと良いでしょう。
    逆に、すでに電子契約を取り入れているなどの場合は、現在の管理システムと接続しやすいものを選ぶと良いでしょう。
  • 契約書以外の書類も多いか
    見積書や議事録など、契約書以外の書類も多いのであれば、多くの帳票に対応したり細かく設定できたりするものが良いでしょう。
    この手のものは、稟議の電子化にも親和的なので、社内フローの電子化を進めたい企業のニーズと合致しやすいです。
  • 最終的には実際に使う人からみて使い勝手はどうか
    以上のように機能的にある程度絞り込めますが、最終的にはデータの取り込みやすさ、直感的な使いやすさ、ミスの起こりにくさなど、実際に使う人からみて使い勝手がよいものを選んでいくことになるでしょう。

導入コストと運用負担のバランス

こうして、採用したいシステムが絞り込まれていきますが、あとはコストと比較してどこまで妥協すべきかを考えていくことになります。
おおむね導入時のコストは数十万円まで、月額コストは数千円から数万円までのレンジになります。また、各システムも機能やデータ容量によってコースが選べるものもあり、費用面では様々なバリエーションがあります。

他方で、導入することでどれほどコストが削減できるかをみていきます。契約書の物理的な管理コストは計算しやすいですが、通常業務の工数削減については、実際にストップウォッチで短縮時間を計測することもあります。

最終的には、導入コスト+ランニングコスト+メンテナンス等の手間と、管理コスト削減+人件費削減+検索できることのメリット(満足度)を比較し、コスト増になるのであればどの程度まで許容できるかで判断することになるでしょう。

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AIで契約書・規程業務を効率化するツール「LAWGUE(ローグ)」を提供し、法務実務とリーガルテックに精通したエキスパートによる、お役立ち情報を発信しています。

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