契約書レビューとは?流れやポイント、AIを用いた方法までを解説!

LAWGUE編集部
契約書レビューとは?流れやポイント、AIを用いた方法までを解説!
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契約書は、企業活動や取引関係において権利義務を明確化し、トラブルを未然に防止するために不可欠な文書です。しかし、表面的に整っているように見える契約書にも、見落とすと大きなリスクを伴う条項が潜んでいることがあります。本記事では、契約書レビューの基本的な考え方から具体的な流れ、確認すべきポイント、さらに最新のAI技術を活用したレビュー方法に至るまで、実務に役立つ情報を詳しく解説します。

契約書レビューとは?


契約書レビューとは、契約書に記載された条項を精査し、法的リスクや不利益な内容がないかを確認する作業を指します。契約書は単に合意内容を記載するだけでなく、万一のトラブル発生時に自社を守る重要な役割を担います。
レビューでは、依頼者の意向が正しく反映されているか、取引条件に不公平がないか、また法律に適合しているかを検討します。加えて、契約が有効に成立する要件や、将来の紛争リスクを予防するための条項が適切に盛り込まれているかも確認します。専門家によるレビューを通じて、リスクを事前に把握・是正し、安心して契約締結に臨むための基盤を整えることができます。

契約書レビューの流れとは

契約書レビューは、まず契約の背景や目的を相談者からヒアリングすることから始まります。
次に、契約書案や関連資料を収集し、初回レビューを実施。条項の適法性やリスクの有無を精査します。その後、相談者に結果を共有し、意向に沿った修正案を作成。相手方との交渉に備え、必要に応じたコメント付与も行います。
相手方からのフィードバックを受け、再度レビューを重ねたうえでクリーン版を作成し、最終的に契約を締結します。
各段階で専門家の慎重な確認が欠かせません。

ヒアリング

契約書レビューの最初のステップは、相談者とのヒアリングです。ここでは、契約の背景、取引内容、重視すべきポイント、想定されるリスク、過去の取引実績などを詳細に把握します。特に、契約締結の目的や、譲れない条件、柔軟に対応できる部分など、実務上の希望も明確にしておくことが重要です。
ヒアリングの質が、その後のレビューの的確さを左右するといっても過言ではありません。相談者の意向を丁寧に聞き取り、レビュー方針を共有することが成功の第一歩です。

資料準備

ヒアリングをもとに、契約書案や関連資料(事業計画書、仕様書、過去の契約書など)を収集します。特に参考にすべき業界標準や、これまでの取引慣行がある場合は、それらを資料として準備しておくことが重要です。
また、契約交渉の前提となるメールのやりとり、提案書などもレビューの際に役立つ情報源となります。資料の充実度により、より精緻なリスク分析が可能になります。

契約書レビュー(初回)

準備した資料をもとに、契約書の初回レビューを実施します。契約の条項一つひとつについて、法的な問題点、不利益な内容、表現の曖昧さなどをチェックし、必要に応じて修正案を作成します。
また、相談者の希望を踏まえて、強化すべき条項(たとえば解除権の明確化や損害賠償範囲の限定)などを提案します。この段階では、リスクを幅広く洗い出し、対策の方向性を明確にしておくことが肝要です。

相談者による確認・コメントバック

初回レビューの結果を相談者に共有し、フィードバックを受けます。ここでは、修正内容について理解を得るだけでなく、相談者のビジネス上の意図や優先順位を再確認することがポイントです。
契約書に対する相談者の意見や要望を受け、さらに調整を重ねることで、依頼者にとって最適な契約書に仕上げていきます。このコミュニケーションを密にすることで、後のトラブルも防ぐことができます。

コメントの確認

相談者からのフィードバックを受けた後、改めて修正案を精査します。意向が適切に反映されているか、不明瞭な点や解釈のブレがないかを確認し、必要に応じて追加修正を行います。この作業は細かいですが、完成度の高い契約書作成には欠かせないプロセスです。また、社内の関係部署(営業部門、法務部門など)との最終確認もこの段階で実施することが多いです。

相手方への契約書案の提示

修正を施した契約書案を、相手方に提示します。この段階では、相手方に対して、自社の主張やリスク回避策を適切に織り込んだ形で提案することが求められます。
条項ごとに変更理由を説明できるよう準備し、必要に応じて交渉をリードします。相手方との交渉では、譲歩可能な点と絶対に譲れない点を明確に区別して臨むことが成功の鍵となります。

契約書レビュー(2回目)

相手方からの修正提案やコメントを受け取り、それに基づき2回目の契約書レビューを実施します。ここでは、相手方提案の内容を慎重に分析し、自社に不利なリスクが新たに持ち込まれていないかを確認します。
また、相手方の修正意図を正確に読み取り、必要に応じて再交渉の準備を行います。このステップでは、初回よりもさらに具体的なリスク管理能力が求められます。

当方・相手方契約書レビュー

双方のコメントや修正案をすり合わせ、合意に向けた最終調整を行います。特に、リスク分担、責任範囲、契約解除条件などの重要条項については、十分な協議と確認を重ねます。
両当事者が納得できる内容に着地させるため、柔軟な対応と冷静な交渉が求められます。必要に応じて、各条項について解釈の確認を文書化しておくことも有効です。

クリーン版の作成

すべての合意内容を反映した最終版、いわゆる「クリーン版」の契約書を作成します。クリーン版には、修正履歴やコメントは残さず、完成された文書としてまとめます。この段階では、条項の整合性、表現の統一、署名欄の配置など、形式的な面にも細心の注意を払います。また、押印・署名に向けた社内手続(稟議・承認など)も並行して進めます。

契約書の締結

最終確認を経たクリーン版契約書に基づき、正式な締結を行います。署名押印の形式や、複数部数作成の要否など、締結実務にも注意を払う必要があります。
締結後は、契約書を適切に保管し、履行段階で参照できる体制を整えておくことが重要です。
また、契約期間満了時の対応や更新手続についても、事前に検討しておくことが望ましいでしょう。

契約書のレビューで必ず確認すべき6つのポイント

契約書のレビューにおいては、単に条文を読み解くだけでなく、法的リスクを見抜き、ビジネス上の意図を的確に反映させる視点が求められます。
ここでは、契約書を精査する際に弁護士が必ずチェックする6つの重要ポイントをご紹介します。これらの項目を押さえておくことで、契約締結後の不利益や紛争を未然に防ぎ、安心して取引を進めることが可能になります。

相談者の意向反映

契約書レビューにおいて最も重要な視点の1つが、相談者の意向が正確に反映されているかです。契約書は単なる法律文書ではなく、取引の実態や当事者の希望を具体化するものです。たとえば、リスクをできる限り回避したい、交渉の余地を残しておきたい、迅速な契約締結を優先したいといったニーズは案件ごとに異なります。ヒアリングを通じて、相談者のビジネス上の目的や重視点を把握し、それに沿った条項設計を行うことが求められます。意向を汲み取る細やかな対応が、信頼性の高い契約書作成につながります。

自社への不利益はないか

契約書レビューにおいては、自社にとって不利益となる条項が含まれていないかを慎重に確認することが不可欠です。特に注意すべきは、損害賠償責任の範囲、解除条件、秘密保持義務、知的財産権の帰属などの条項です。これらに不利な規定があると、将来的に大きな損失や責任を負うリスクがあります。
また、相手方に一方的な権利を与える内容や、自社の業務遂行を著しく制約する内容も見逃せません。契約内容を冷静に分析し、リスクを事前に是正することが、健全なビジネス関係を築くための重要なポイントです。

適法性と有効性

契約書の内容が法律に適合しているか(適法性)、そして契約として有効に成立するか(有効性)の確認は、レビューにおいて基本かつ重要な作業です。
たとえば、公序良俗に反する内容が含まれている場合、その部分は無効とされ、全体の契約の効力にも影響を及ぼす可能性があります。
また、強行法規に反する条項があると、行政からも処分を受けたりするリスクもあります。形式的には、契約当事者の意思表示が明確であるか、署名・押印などを満たしているかも確認が必要です。法的に有効な契約とするためには、形式面と実質面の両方から慎重にチェックすることが求められます。

紛争予防

契約書の重要な役割の1つが、将来の紛争を未然に防ぐことです。条項の文言が曖昧であったり、責任の所在が不明確であったりすると、解釈の違いからトラブルに発展する可能性があります。そこで、契約書には履行内容や期間、違反時の対応、解除条件などを具体的かつ明確に記載することが必要です。
また、万が一紛争が発生した場合に備え、準拠法や管轄裁判所、仲裁条項を設けることで、解決手段をあらかじめ定めておくことも有効です。予防的観点からのレビューを徹底することが、円滑な取引関係の維持につながります。

実効性

契約書の「実効性」も、契約に基づいて当事者に義務の履行を法的に強制できるかという観点から検討される、重要な要素です。たとえ契約内容自体は明確であっても、履行義務が不確定であったり、実現不可能な内容が含まれていたりすれば、裁判等で強制力を持たせることが困難となります。
特に、「努力義務」や曖昧な定義のまま記載された条項は、強制執行の対象にならないおそれがあります。そのため、契約書には履行内容、期限、条件などを具体的かつ客観的に記載し、万一の紛争時にも実行力のある文書となるよう構成することが重要です。

その他の確認事項

契約書レビューでは主要条項以外にも、取引の性質に応じた個別の確認項目を見落とさないことが重要です。
たとえば、知的財産権の帰属、秘密保持義務、競業避止条項、再委託の可否、契約期間の自動更新有無などが挙げられます。また、印紙税の対応や契約終了後の義務(例:返却・削除義務)についても検討が必要です。これらの項目は、トラブル発生時に当事者の立場を大きく左右することがあるため、契約の全体像を踏まえて総合的にチェックすることが求められます。細部に目を配ることで、より実効性の高い契約書となります。

契約書のレビューの形式とは

契約書レビューでは、単に内容を確認するだけでなく、「どのように修正や意見を伝えるか」という形式も非常に重要です。レビューの主な形式には、①契約書の修正、②相手方へのコメント付与、③社内向けコメント付与の3つがあります。

契約書の修正

もっとも一般的な方法は、契約書案に直接修正を加える形式です。Wordなどで変更履歴(赤字修正)を使い、削除・追加を明示することで、変更内容が一目でわかるようにします。
修正案を提示する際は、内容の整合性や背景説明も併せて行うことで、相手方との交渉がスムーズになります。

相手方へのコメント付与

直接修正せず、コメントとして意見や懸念点を伝える方法もあります。たとえば「損害賠償の上限設定について検討を希望します」といった内容を該当箇所に添え、柔軟な交渉の余地を残すことができます。これは一方的な主張を避け、建設的な議論を促すのに有効です。

社内向けコメント付与

契約書のリスクや交渉方針について、社内の関係者向けに補足コメントを付けることも重要です。たとえば「この条項は当社に不利な内容であり、修正を検討すべきです」といったコメントを加えることで、判断材料を提供できます。ただし、これらの社内向けコメントが外部に漏れないよう、管理には十分注意が必要です。

AIで契約書をレビューする

AIによる契約書レビューは、自然言語処理や機械学習の技術を活用し、契約書の条文を解析・分類した上で、リスクのある表現や不備を自動的に抽出する仕組みです。たとえば、過去の契約データや法令と照合しながら、曖昧な条項や一般的でない条件を指摘します。AIは大量の契約書を短時間で処理でき、見落とし防止にも効果的です。信頼性についても、リーガルテック各社が法務専門家の知見を学習させることで高精度化が進んでおり、実務でも有用性が高まっています。
ただし、こういったサービスについて、一切弁護士が関わらないような場合には弁護士法違反になる可能性もありますし、法的な最終判断は専門家の確認が不可欠です。

AIで契約書をレビューするメリット

AI技術を活用した契約書レビューは、近年多くの企業や法律事務所で導入が進んでいます。従来の人手によるレビューと比べて、AIの導入には多くのメリットがあり、法務業務の効率化と高度化を同時に実現する手段として注目されています。ここでは、主な3つの利点を紹介します。

コストを削減できる

AIを活用することで、契約書の確認・分析にかかる人件費を大幅に削減することが可能です。従来、法務担当者や弁護士が長時間かけて行っていたチェック作業を、AIが数分で処理できるため、工数の圧縮につながります。特に大量の契約書を扱う大企業や、多数の取引先を抱えるスタートアップにとっては、コストメリットが非常に大きく、限られた法務リソースの有効活用が実現します。

時間を削減できる

AIは、契約書の条項を自動で解析し、リスクのある条文や一般的でない表現を瞬時に検出できます。これにより、レビュー作業の所要時間を大幅に短縮でき、急ぎの案件や同時並行で複数の契約を処理する場面でも迅速な対応が可能になります。法務部門における業務のスピードアップは、取引全体の意思決定を早め、ビジネスの機会損失を防ぐ効果も期待されます。

知識を蓄積できる

AIは過去のレビュー結果や契約書データを学習し続けることで、精度を高めていきます。一度指摘したリスクや修正傾向を記録・再活用することができ、ナレッジの蓄積と共有が自動化されます。これにより、担当者が変わっても一定の品質を保ったレビューが可能となり、属人化を防ぐ体制構築にも貢献します。また、法改正や判例の動向にも迅速に対応できるAIであれば、常に最新の法的知見に基づいたレビューを実現できます。

まとめ

契約書レビューは、法的リスクの予防と円滑な取引の実現に欠かせないプロセスです。適切な流れと確認ポイントを押さえることで、より安全で実効性の高い契約が可能になります。さらにAIの活用により、効率性と精度の向上も実現できます。信頼性あるレビュー体制を整え、ビジネスを法的に強く支えることが重要です。

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